最終更新日:2026年9月18日

【この記事の要約】

舞鶴市大波下で、京都府内初となるクマの「緊急銃猟」が実施され、成獣1頭と約5kgの幼獣1頭が殺処分されました。

私は、人命を最優先した今回の駆除判断そのものは支持しています。
一方で、幼獣を保護できなかった理由や、全国報道につながった広報のあり方、その後の市民対応には検証すべき点が残ったと考えています。

過去に情報公開請求した275ページの資料を確認すると、舞鶴市農林課は以前から、出没記録、現地確認、警察との連携、追い払い、わな、捕獲などを細かく続けてきました。
令和8年度も有害鳥獣対策に約8,600万円を予算化しており、現場では市職員、警察、地域住民など多くの人が対応しています。

つまり今回の問題は、現場が何もしていなかったことではありません。
「舞鶴市は実はしっかりクマ対策をしてきた。その事実を、もっと早く丁寧に伝えるべきだった」

というのが、この記事で最も伝えたい点です。

9月3日、舞鶴市大波下の住宅地で、ツキノワグマ2頭が民家の離れの縁の下に居座りました。

現場は山の中ではありません。若浦中学校にも近い住宅地です。

午後5時10分ごろに110番通報があり、舞鶴市、京都府、舞鶴警察署などが対応。周辺住民には屋内退避が呼びかけられ、道路も規制されました。

そして舞鶴市は、人への危険が高いと判断し、京都府内で初めてとなる「緊急銃猟」を実施しました。

現場では麻酔銃を使用して2頭を捕獲し、その後、殺処分されました。

駆除されたのは、

  • 雌の成獣 約25kg
  • 雄の幼獣 約5kg

の2頭で、親子とみられています。

幸い、人的被害はありませんでした。

私は今回の駆除そのものは「英断」だったと考えています

まず大前提として、私は今回の駆除そのものについては支持しています。

住宅地の民家にクマが居座り、住民を屋内退避させ、道路まで封鎖しなければならない状況でした。

ここまで人の生活圏に入り込んだ以上、最優先すべきは市民の生命と安全です。

「クマがかわいそう」という気持ちは理解できます。

しかし、判断を先送りした結果、住民や子どもが襲われれば取り返しがつきません。

その意味で、人命を優先した舞鶴市の判断は英断だったと考えています。

一方で、約5kgの幼獣まで殺処分されたことについては、複雑な思いがあります。

幼獣であっても野生動物ですし、安全面や受け入れ先など簡単な問題ではありません。

それでも、安全に確保できる状況だったのであれば、

「幼獣だけでも保護できなかったのか」

という疑問は残ります。

私の立場は、

「人命最優先。ただし幼獣については、安全に保護できる可能性があるなら検討してほしい」

というものです。

駆除後も大波下では小熊の目撃が続いた

今回の件は、2頭を駆除して終わりではありませんでした。

大波下周辺では、その後も小熊の目撃情報が続きました。

もともと周辺では、親1頭・子2頭とみられる3頭の目撃情報もありました。

今回駆除されたのは成獣1頭と幼獣1頭ですが、その後も同じ大波下周辺で小熊1頭が複数回目撃されています。

ただし、この小熊が今回駆除された親子と関係する個体なのか、それとも別の個体なのかは確認されていません。

ここは憶測ではなく、確認できている事実だけを見る必要があります。

全国報道で一気に注目を集めた「京都府初の緊急銃猟」

今回の事案は、テレビ朝日、関西テレビ、ABC、朝日新聞、共同通信、NHKなど、多くの報道機関が取り上げました。

「京都府初の緊急銃猟」

「親子とみられるクマ」

「25kgの母グマと5kgの子グマ」

「麻酔銃で捕獲後、殺処分」

という情報が全国へ一気に広がりました。

現場映像も多数報道され、産経新聞のネット記事では殺処分後の親グマの写真まで掲載されました。

私は、報道機関が事実を伝えたこと自体を問題にしているわけではありません。

私が疑問に感じるのは、

「行政として、どこまで現場を見せる必要があったのか」

という点です。

地域住民への安全確保であれば、防災メール、警察のパトロール、道路規制、屋内退避などで対応できます。

そして安全が確保された後に、

「これまでこれだけ出没があり、これだけ対策してきた。それでも今回は危険と判断したため、やむを得ず駆除した」

と丁寧に説明する方法もあったはずです。

結果として、「親子」「5kgの子グマ」「殺処分」といった感情を強く刺激する部分だけが全国へ先に広がり、ネット上では大きな議論になりました。

Facebookで意見を募集してみました

私自身もFacebookで今回の駆除について意見を募集しました。

大きく分けると、次のような意見がありました。

「人里に出たクマは駆除すべき」

市街地や住宅地に出たクマは危険害獣として駆除すべき。

ただし、山の中にいて危険性がなければ、そのままにしておけばいいという考え方です。

「個体数管理そのものを見直すべき」

クマの個体数が増えすぎ、人間を怖がらなくなっているのではないか。

今回の1頭、2頭だけの問題ではなく、行政が適正な個体数管理をできてきたのか検証すべきだという意見です。

「まず一度は山へ返してはどうか」

山にいるクマと人里まで降りてきたクマは分けて考える。

一度目は麻酔などで捕獲して山へ返し、再び人里へ戻ってきた場合は駆除するという段階的な対応を求める意見もありました。

つまり、単純に「賛成」「反対」だけではありません。

どこまで人の生活圏に入ったら駆除するのか。

放獣という選択肢はあるのか。

個体数そのものをどう管理するのか。

さまざまな論点があります。

ネット上でも意見は大きく分かれた

ネット上の反応も大きく6つに分けられます。

  1. 駆除そのものに反対
  2. 殺す前に別の方法を検討すべき
  3. 舞鶴市の説明不足を指摘
  4. 人命最優先として駆除を支持
  5. 市職員への暴言や大量の抗議を問題視
  6. 市長の「カスハラ」発信に違和感を持つ

特に目立ったのが、

「なぜ麻酔で眠らせた後、山へ返せなかったのか」

「なぜ5kgの幼獣まで殺処分したのか」

という疑問です。

これは単純な「クマを殺すな」という話だけではありません。

「その判断に至った理由を説明してほしい」

という声でもあります。

私は以前、舞鶴市のクマ対策を情報公開請求しています

ここで、今回どうしても紹介しておきたい資料があります。

私は以前、舞鶴市の有害鳥獣対策について情報公開請求を行いました。

開示された資料は、なんと275ページ。

令和3年度から令和7年度までのクマ出没情報をはじめ、サルやその他の有害鳥獣に関する資料、捕獲許可関係まで詳細に記録されていました。

私はそれを見るまで、

「舞鶴市はクマ対策をあまりやっていないのではないか」

と思っていました。

しかし、資料を見て認識が変わりました。

出没日時、場所、緯度・経度、目撃状況、現地確認、警察との連携、追い払い、捕獲など、かなり細かく記録されていたからです。

令和6年度だけでも、出没や痕跡などの記録は152件。

令和7年度も、資料が作成された8月上旬の時点ですでに60件を超える記録があります。

私自身の舞鶴メール配信サービスを調べても、この1年間でクマ関連メールは51通。

訂正を除けば、実質50件の出没・目撃・痕跡情報が配信されています。

つまり、今回だけ突然クマ問題が起きたわけではありません。

舞鶴市は「クマを見つけたら殺す」対応ではない

情報公開資料を見ると、舞鶴市は多くのケースで、

  • 現地確認
  • 警察によるパトロール
  • 爆竹
  • ロケット花火
  • クラクション
  • ヘッドライト
  • 追い払い
  • 注意喚起
  • わなの設置
  • 継続的な監視

などを行っています。

過去には、住宅裏に居座ったクマに対して警察と爆竹による追い払いを試み、それでも動かなかったため翌日に薬殺した事例もあります。

つまり、

「クマが出た → 即殺処分」

ではありません。

危険性が低ければ山へ戻るのを待つ。

必要なら追い払う。

それでも危険を排除できなければ捕獲や処分を行う。

その積み重ねが資料から見えます。

大波下は以前からクマの出没が続いている地域

今回の現場である大波下も、過去から何度もクマが確認されています。

若浦中学校周辺、新大波トンネル周辺、大波下集会所周辺などで、成獣だけでなく幼獣や親子グマの目撃も記録されています。

今回だけ突然クマが現れたわけではないのです。

年間8,600万円を超える有害鳥獣対策予算

令和8年度の舞鶴市では、有害鳥獣被害防止対策事業費として8,615万8,000円が計上されています。

もちろん、これはクマだけではありません。

シカ、イノシシ、サルなども含めた有害鳥獣全体の対策費です。

それでも約8,600万円という金額から、この問題が舞鶴市にとって大きな行政課題であることが分かります。

さらに、クマ対策は税金だけで成り立っているわけではありません。

出没地域では地域役員が警戒し、住民へ注意を呼びかけています。

警察もパトロールをしています。

私自身、お巡りさんから、

「クマの通報があれば、すぐ出動できる体制になっている」

という趣旨の話を聞いています。

市職員、警察、地域住民、捕獲に携わる方々。

出没のたびに、多くの人が時間と労力を使っています。

クマ対応は行政だけの仕事ではなく、地域全体で背負っている問題です。

ここまで説明すれば、見え方は全く違ったはず

ここまで調べると、私は今回、農林課を批判する気にはなれません。

むしろ、担当課は地道に良い仕事をしてきたと思います。

毎年多数の出没情報を記録し、警察や地域と連携し、パトロール、追い払い、わな、捕獲まで続けている。

有害鳥獣対策にも大きな予算を投入している。

そのうえで今回は、住宅地の民家にクマが居座り、人命への危険が高いと判断した。

私は、この背景を最初から舞鶴市が丁寧に説明していれば、

ここまで炎上しなかったのではないか

と思っています。

そして市民にも市外の人にも、

「舞鶴市の農林課はちゃんとやっている」

ということが伝わったはずです。

今回の問題は、

現場が仕事をしていなかったことではありません。

現場の仕事を伝える広報が弱かったことです。

その後、舞鶴市はどう対応したのか

9月3日の殺処分後も、大波下周辺では小熊の目撃が続き、市や警察による警戒、パトロール、住民への注意喚起が続きました。

その後、全国報道を受けて舞鶴市には多くの電話やメールが寄せられました。

市長の発信によれば、中には、

「職員は死んだほうが良い」

「職員の親族もろくでもない」

といった暴言もあったとのことです。

こうした発言は許されるものではありません。

職員を守るため、毅然と対応することには私も賛成です。

9月8日には、舞鶴市公式ホームページで緊急銃猟に至った経過や判断理由が詳しく公表されました。

同じ9月8日、市長もFacebookで「カスハラ対策」について発信しています。

「ホームページへの掲載をもって回答」は、それでいいのか

舞鶴市は公式ページで、

「多数いただきました緊急銃猟に至った経過などに関するお問い合わせにつきましては、このホームページへの掲載内容をもって回答とさせていただきます。個別のお返事はいたしません」

としています。

個別にすべての問い合わせへ返信できないことは理解できます。

職員の負担にも限界があります。

しかし私は、

届いた意見を見せないまま「ホームページをもって回答終了」では、行政広報として不十分ではないか

と思います。

今回のように賛否が割れている問題なら、個人情報や暴言を除いたうえで、

  • 駆除賛成の意見
  • 駆除反対の意見
  • 幼獣保護を求める意見
  • 放獣できなかった理由を求める意見
  • 職員対応への意見
  • 市外からの意見

などに分類し、

「市にはこのような意見が寄せられています」

と公開することはできるはずです。

そのうえで、

「この意見について市はこう考えます」

「この点は今後検討します」

「この対応は安全上できません」

と答えれば、行政と市民の対話になります。

市民の声を受け取ったなら、

何が寄せられたのかを市民へ返すところまでが広報

ではないでしょうか。

カスハラと正当な行政批判は分けるべき

今回、市長は職員への暴言や誹謗中傷について、カスタマーハラスメントとして毅然と対応すると表明しました。

これ自体には賛成です。

ただし、

「職員は死んだほうが良い」

という暴言と、

「なぜクマを殺したのか」

「幼獣を保護できなかったのか」

「情報公開請求をしたい」

という質問は、全く同じではありません。

行政へ説明を求めることも、情報公開請求を行うことも、正当な行為です。

もちろん、同じ質問でも、長時間怒鳴る、脅す、人格を攻撃する、職員を拘束するといった行為になれば別です。

線引きすべきなのは、

「行政を批判したかどうか」ではありません。

その手段や態様が社会通念上許容されるものかどうかです。

今回の市長発信では、正当な問い合わせと明らかな暴言が近い文脈に置かれています。

そのため受け手によっては、

「市の方針を批判したらカスハラ扱いされるのではないか」

という印象を持つ可能性があります。

そこは丁寧に分けるべきだと思います。

苦情が悪質化した「結果」だけでなく、その前も検証してほしい

もう一つ重要なのは、悪質なクレームになった結果だけを見るのではなく、

なぜそこまで不満が大きくなったのか

という前段階も検証することです。

もちろん、説明不足があったからといって、暴言や脅迫が正当化されるわけではありません。

しかし、最初は普通の疑問だったものが、説明不足や対応の行き違いによって大きな不満へ変わることはあります。

今回でいえば、

安全確保

緊急銃猟

全国報道

疑問や反対意見

詳細な説明

寄せられた意見の整理・公開

という順番で丁寧に対応していれば、少なくとも一部の対立は避けられた可能性があります。

私が今回一番伝えたいこと

今回の緊急銃猟について、私は人命を最優先した判断を支持します。

そして過去の情報公開資料を調べた結果、舞鶴市農林課が長年にわたり相当細かくクマ対策を続けてきたことも分かっています。

だからこそ残念なのです。

舞鶴市は実はちゃんとやっている。

しかし、その事実が十分に伝わっていない。

全国報道で「親子グマ」「5kgの幼獣」「殺処分」という強い情報だけが先行し、その後に説明が追いかける形になりました。

私は、今回必要だったのは、

「批判する人を黙らせること」ではなく、これまで何をしてきて、なぜ今回は殺処分に至ったのかを伝えること

だったと思います。

職員を守ることは必要です。

同時に、市民の声を聞くことも必要です。

この二つは対立するものではありません。

「職員を守ること」と「市民の声を聞くこと」は両立できる。

そして、現場で頑張っている職員の仕事を正しく伝えることも、行政広報の大切な役割ではないでしょうか。

今回の問題を通じて、私はクマ駆除の是非だけでなく、

舞鶴市の広報のあり方、市民との向き合い方についても考える必要がある

と思っています。

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