
この記事の要約
- 舞鶴市の休日地域クラブ活動「まいかつ」は、2026年度の2学期から本格的に始まります。
- 運営業務の契約候補者には、東京に本社を置くリーフラス株式会社が選ばれました。
- 提案上限額は1,000万円ですが、これは最終的な契約額ではありません。
- 利用者管理や会費徴収などのシステムが、地域団体の事務負担を増やす可能性があります。
- 運用方法によっては、LINEなどとの二重管理、団体の撤退、問い合わせの集中も懸念されます。
- 福知山の団体なら成功したとは断定できませんが、対面支援や地域へのノウハウ蓄積という可能性はありました。
- 望ましいのは、舞鶴市内に担当者を置き、システム入力や事務処理を運営側が引き受ける仕組みです。
システムを主役にするのではなく、地域の指導者が子どもたちの活動に集中できる制度にすることが重要です。
2026年度の2学期から、舞鶴市の中学生を対象とした休日の地域クラブ活動「まいかつ」が本格的に始まります。
その運営業務を担う契約候補者に選ばれたのは、東京に本社を置くリーフラス株式会社です。公募にはリーフラス社と一般社団法人福知山ユナイテッドの2者が参加し、舞鶴市はリーフラス社を388.8点で特定者(契約候補者)に選びました。
最初に事実関係を整理しておきます。舞鶴市が公表しているのは、現時点では「契約候補者」と「提案上限額1,000万円」です。最終的な契約額や、リーフラス社の詳しい企画提案書、両者の採点内訳は公表されていません。
したがって、この記事はリーフラス社の実際の運営を批判するものではありません。舞鶴市が公表した仕様書と質問回答書をもとに、制度設計にどのような懸念があるのか、運用開始後に何が起こり得るのかを検証するものです。
「まいかつ」とは
「まいかつ」とは、これまで学校が担ってきた休日の部活動を、地域のスポーツ・文化団体などが担う仕組みです。
少子化で学校単位の部活動を維持することが難しくなる中、中学生が継続してスポーツや文化芸術に親しめる環境をつくることが目的です。この目的自体には大きな意義があります。
問題は、その運営方法です。
舞鶴市が委託する業務は、主に次の6項目です。
- 利用者管理システムなどの提供・運用
- 電話やメールによる総合窓口の運営
- 学校施設などの利用調整
- 指導者研修の実施
- ホームページやポータルサイトによる広報
- 活動状況の集計、アンケート、課題分析
つまり、受託事業者が子どもたちを直接指導することが中心ではありません。参加者情報、活動予定、会費、施設、相談、広報、実績報告などを支える「運営事務」が仕事の中心です。
予算は「上限1,000万円」
この業務の提案上限額は、消費税を含めて1,000万円です。委託期間は契約締結日から2027年3月31日までとされています。
この予算の中で、利用者管理システム、会費徴収、電話・メール窓口、施設調整、研修、広報、調査分析、休日の問い合わせ対応などを行うことになります。
質問回答書によると、休日にはリアルタイムの電話対応を含む窓口の開設も想定されています。一方で、窓口の対応時間、現地に配置する人員、操作できない団体への代理入力、舞鶴市内での対面支援など、運営の質を左右する重要な部分は、公開資料だけでは分かりません。
1,000万円が高いか安いかを、金額だけで判断することはできません。重要なのは、その予算で舞鶴市内に何人を配置し、誰がどこまで現場を支えるのかです。
問題点1――システムを使うのは誰なのか
仕様書では、参加希望情報の登録、団体への情報提供、参加・欠席連絡、活動スケジュールの一元管理、会費徴収などをシステムで行うことが想定されています。
システムによる一元管理は、行政や受託事業者にとっては便利でしょう。しかし、実際の入力や確認を誰が行うのかによって、現場の負担は大きく変わります。
舞鶴市から受託事業者へは、参加希望者や実施団体の情報をCSV形式で提供できるとされています。一方、各クラブは、活動日、時間、参加人数、活動場所などを報告し、受託事業者はそれを月次報告にまとめることが求められています。
ここで各団体に、出欠、日程、活動場所、会費確認、実績報告などの反復入力まで求めるのであれば、受託事業者の事務を地域のボランティアへ移すことになりかねません。
舞鶴の地域団体の多くは、専任事務員やIT担当者を抱えた企業ではありません。仕事を持ちながら、子どもたちのために活動している人たちです。
システムで行政や受託事業者が効率化できても、その入力作業を無償の地域活動へ転嫁するなら、制度全体が効率化したとはいえません。負担の置き場所が変わっただけです。
問題点2――便利になるはずが、二重管理にならないか
学校施設については、現在、市が各団体の希望を聞き、月ごとの利用予定をExcelにまとめています。委託後も、市が事前調整したデータを受託事業者へ渡す予定です。
一方、体育館などの公共施設は、各団体が既存の「舞鶴市公共施設予約システム」で予約し、その活動場所を新たに導入するシステムなどを通じて参加者へ知らせる運用が想定されています。
つまり、運用次第では、既存の施設予約、団体内のLINEや電話、新しい公式システムという複数の管理が並立します。
活動の基本となる曜日、時間、場所がある程度決まっている団体なら、年度当初や学期初めにまとめて登録し、その後は中止、振り替え、会場変更などの例外だけを連絡すれば済むはずです。
にもかかわらず、毎回同じ情報の入力や確認を求めるなら、それはデジタル化ではなく「管理方法を一つ増やしただけ」になってしまいます。
問題点3――制度の成否を分けるのはシステムではなく人
パスワードを忘れた。入力方法が分からない。会費の表示が合わない。急な会場変更を知らせたい。保護者から相談が入った。
実際の現場では、このような細かな問題が必ず起こります。
そのとき必要なのは、高機能なシステムではなく、すぐに電話がつながり、必要なら代理入力を行い、場合によっては現場まで来てくれる担当者です。
リーフラス社は全国でスポーツスクールや部活動支援を行う企業であり、実績そのものはあります。しかし、全国的な実績があることと、舞鶴の地域団体に寄り添った運営ができることは別問題です。
確認すべきなのは会社の知名度ではなく、次の点です。
- 舞鶴市内に担当者を置くのか
- 休日の電話窓口は何人で対応するのか
- 対面支援や現場訪問を行うのか
- システムを使えない団体には代理入力するのか
- 問い合わせに何日以内で回答するのか
- 担当者が交代しても地域との関係やノウハウが残るのか
ここが曖昧なままでは、システムは立派でも現場が回らないという事態が起こり得ます。
このまま進めると、何が起こるのか
ここからは、公表資料をもとにした予測です。実際の運用が次のようになると断定するものではありません。
1.問い合わせが集中する
操作方法、登録内容、会費、日程変更などの問い合わせが増えれば、オンライン化で減らすはずだった事務が、電話対応や修正作業として戻ってきます。最終的には、受託事業者か舞鶴市が代理入力しなければ回らなくなる可能性があります。
2.LINEと公式システムの二重運用になる
現場は止められません。公式システムが使いにくければ、団体は使い慣れたLINEや電話で活動を進め、後から公式システムへ記録するようになるでしょう。
その結果、実際の参加者と公式名簿が合わない、欠席や退会が反映されない、会費や活動実績に食い違いが出るといった問題が起こるおそれがあります。
3.事務負担を理由に撤退する団体が出る
子どもを指導したいという思いがあっても、登録、会費、施設、報告まで無償で求められれば、「そこまではできない」と参加を諦める団体が出るかもしれません。
制度を支えるための仕組みが、事務処理に対応できない団体をふるい落とし、子どもたちの選択肢を減らす結果になれば本末転倒です。
4.システムが報告のためだけの箱になる
入力が後回しになれば、システムは日常運営の道具ではなく、月末や年度末に帳尻を合わせる報告装置になります。実態と違うデータを集めても、次年度の政策判断には役立ちません。
福知山の団体だったらどうだったのか
今回の公募には、一般社団法人福知山ユナイテッドも参加しました。
ただし、両者の詳しい企画提案や採点内訳は公開されていません。そのため、「福知山の団体を選んでいれば必ずうまくいった」とは断定できません。
地域性だけを考えれば、福知山の団体は同じ京都府北部に拠点があり、舞鶴へ足を運びやすいという利点があります。対面説明、現場訪問、緊急時の対応を組み立てやすく、地方都市の交通事情や、専任事務員のいない地域団体の実情も共有しやすかった可能性があります。
また、舞鶴の関係者と一緒に試行錯誤することで、京都府北部に人材と運営ノウハウを残すという選択肢もありました。
一方で、福知山の団体に十分な人員があるのか、スポーツだけでなく文化・芸術・ボランティア分野まで支援できるのか、会費や個人情報を安全に管理できるのかは、公開資料からは判断できません。
問題は、単純な「東京対福知山」ではありません。
全国的な実績やシステムの機能と、地域に密着した対面支援のどちらを重く評価したのか。舞鶴市の選定基準は、現場に必要な伴走支援と、地域へのノウハウ蓄積を適切に評価できていたのか。そこを検証する必要があります。
望ましい形――人を中心に、システムを裏方にする
舞鶴市に合うのは、地域団体へシステム操作を求める運営ではなく、地域担当者が現場と公式記録をつなぐ運営です。
具体的には、次のような形です。
- 舞鶴市内に専任担当者と補助職員を置く
- LINE、メール、電話、紙、対面の中から使いやすい連絡方法を選べるようにする
- システムを使えない団体については、担当者が代理入力する
- 施設や活動の基本日程は最初に一括登録し、変更だけを連絡する
- 参加者登録、会費処理、実績集計、市への報告は、報酬を受け取る運営側が担う
- 団体側の作業時間、問い合わせ対応時間、撤退団体数、記録の正確性を継続的に公表する
行政側の負担は増えるでしょう。立ち上げ当初は苦労も予想されます。
しかし、上限1,000万円の予算を市外企業への委託だけでなく、舞鶴市内の常勤担当者と補助職員の配置に使う方法も検討できたはずです。そうすれば、予算のより多くが地域の人件費として循環し、団体や保護者から寄せられた相談、その解決方法、施設調整や会費管理の経験も、舞鶴市のノウハウとして蓄積されます。
地域団体が求めているのは、立派なシステムそのものではありません。困ったときに電話でき、入力できなければ代わりに対応し、必要なら現場まで来てくれる人ではないでしょうか。
システムは人を助ける裏方です。人がシステムに奉仕し始めたら、主役と裏方が逆転しています。
これからが本当の検証です
ここまで、現時点で公表されている資料から「まいかつ」の制度設計を検証してきました。その結果、システム入力による現場負担、既存の連絡手段との二重管理、対面支援の不足、地域へのノウハウ蓄積といった懸念が見えてきました。
そして、実際の運用が始まれば、資料だけでは分からなかった新たな問題も出てくると予想されます。
今後も引き続き、私は「まいかつ」の調査と検証を続けてまいります。
そのために必要なのが、現場で活動する指導者の声、参加する生徒や保護者の声、学校関係者や施設管理者の声です。
システムは使いやすいのか。事務作業は増えたのか。問い合わせにはすぐ対応してもらえるのか。活動の選択肢は守られているのか。小さな違和感でも構いません。
皆さまが実際に見たこと、感じたことを、ぜひ私に届けてください。
子どもたちのための制度が、管理する側の都合だけでつくられていないか。舞鶴の現場に本当に合った制度になっているのか。
皆さまの声とともに、これからも検証を続けます。
参考資料
- 舞鶴市「令和8年度舞鶴市まいかつ(地域クラブ活動)運営業務委託に係る公募型プロポーザル」
- 舞鶴市「まいかつ運営業務委託仕様書」
- 舞鶴市「質問回答書」
- リーフラス株式会社「会社概要」
- 一般社団法人福知山ユナイテッド公式サイト
※2026年8月6日時点の公表資料に基づいています。

