今回は、防災士・森本たかしとしての注意喚起です。

7月28日に発生した令和8年熊本地震。被災地では猛暑のなか、断水や厳しい避難生活が続いています。大規模な停電は復旧が進んでいますが、住宅の損壊などによって電気を使えない人もいます。

この状況を見て、

「わが家もポータブル電源を買っておこう」

と考える人は多いでしょう。

スマートフォンの充電だけでなく、扇風機や冷蔵庫を動かせる製品もあります。停電時には非常に心強い防災用品です。

私は「買うな」と言うつもりはありません。

ただし、ポータブル電源は、買って押し入れに入れておけば安心という防災グッズではありません。

製品選びや保管方法を間違えると、災害への備えとして購入したものが、火災や爆発の原因になる可能性があります。

ポータブル電源の事故は増えている

NITE(製品評価技術基盤機構)の資料によると、リチウムイオン電池を使用したポータブル電源の事故は、2021年の14件から2025年には43件へ増加しました。

過去5年間では147件の事故が報告され、そのうち144件が火災。建物や周囲の物まで燃えた「拡大被害」も101件確認されています。

ポータブル電源には多数の電池セルが内蔵されています。そのため、内部でショートや異常発熱が起きて「熱暴走」に至ると、発生する熱量が大きく、深刻な火災につながる危険があります。

しかも、事故は充電中だけに起きるとは限りません。

NITEが集計したリチウムイオン電池搭載製品の事故では、充電も使用もしていない状態で発生した事故も確認されています。

「コンセントを抜いているから安全」

「使っていないから大丈夫」

とは言い切れないのです。

猛暑の災害時は、さらに注意が必要

リチウムイオン電池は高温に弱く、NITEの統計でも、事故は気温の上昇とともに増え、8月にピークを迎える傾向があります。

災害時には、自宅のエアコンが使えない、避難のため車に積み込む、屋外やテントで使用するといった状況が考えられます。

しかし、真夏の車内、直射日光の当たる場所、高温になる物置やテントの中は、ポータブル電源にとって危険な環境です。

停電対策として購入した電源を、炎天下の車内に置きっぱなしにする。これは「防災」どころか、新しい火種を積んで走るようなものです。

購入時に確認してほしいこと

価格と容量だけで決めないでください。

最低でも、次の点を確認する必要があります。

  • メーカーや販売事業者の名称、住所、連絡先が明記されているか
  • 事故発生時に日本語で連絡できる窓口があるか
  • 保証や修理、回収の仕組みがあるか
  • 製品情報や取扱説明書が十分に公開されているか
  • リコール対象製品ではないか
  • 極端に安い無名製品ではないか
  • 表示されている安全マークと事業者名に不自然な点がないか

PSEマークなどが表示されていても、それだけで製品全体の安全が保証されるわけではありません。マークに似せただけの紛らわしい表示にも注意が必要です。

「大手通販サイトで売っているから安全」という思い込みも禁物です。

通販サイトの知名度と、出品している事業者の信頼性は別問題です。事故後に販売者と連絡が取れなければ、被害者だけが焼け跡と損害を抱えることになります。

使用・保管するときの注意

購入後も、次の点を守ってください。

  • 真夏の車内や直射日光の当たる場所に置かない
  • ストーブなどの熱源や燃えやすい物から離す
  • 避難経路をふさぐ場所には置かない
  • 落下させたり、強い衝撃や圧力を与えたりしない
  • 水ぬれや浸水の可能性がある場所で使わない
  • 常に100%の状態で充電し続けない
  • メーカーの説明書に従って定期的に状態を確認する
  • 膨張、変形、異臭、異音、異常な発熱があれば直ちに使用を中止する

煙や炎が出ている場合は、不用意に近づいたり移動させたりせず、まず人命を優先して避難し、119番通報してください。

災害時だからこそ、「まだ使えるから」と異常のある電源を無理に使うのは危険です。

ポータブル電源は「買って終わり」の防災用品ではない

ポータブル電源は、正しく選び、正しく使えば、災害時の大きな助けになります。

しかし、その内部には大きなエネルギーが蓄えられています。

安全性の不確かな製品を購入し、何年も点検せず、高温になる場所に放置する。それでは備蓄ではなく、危険物の放置になりかねません。

防災用品が火災を起こし、避難生活どころか家そのものを失わせる――そんな逆転事故を起こしてはなりません。

買うなら価格や容量だけで飛びつかない。

買ったら終わりにせず、保管場所と製品の状態を定期的に確認する。

そして通販サイトや行政にも、消費者への注意喚起だけで終わらせず、販売者を追跡できる仕組み、粗悪品を流通させない審査、事故発生時の補償体制を求める必要があります。

命を守るための備えだからこそ、安全性には、少し神経質なくらいでちょうどいいのです。

参考:NITE「夏バテ(夏のバッテリー)にご注意を」熊本県「令和8年熊本地震」災害対応ページ

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