問われるべきは、個人の不祥事だけではなく舞鶴市の地域医療体制です

京都新聞の報道によると、舞鶴市立舞鶴市民病院加佐診療所の70代男性医師が、道路交通法違反、酒気帯び運転の疑いで摘発されました。

この医師は、舞鶴市八田にある加佐診療所の所長で、2015年から診療所長を務めていたとのことです。

摘発されたのは6月14日午前6時ごろ。
三重県桑名市で自家用車を運転中に摘発されました。

事故は起こしていないとのことですが、前夜に飲酒し、車中泊したと説明しているそうです。

舞鶴市は、この医師を6月18日付で診療業務から外しました。

その結果、加佐診療所では内科医が不在となり、当面は水曜日を休診。
火曜、木曜、金曜の内科診療については、市立舞鶴市民病院の医師4人を派遣して対応するとのことです。

まず大前提として、酒気帯び運転は絶対に許されません。

医師であるかどうか以前に、運転者として重大な問題です。
事故が起きなかったからよかった、という話ではありません。

一歩間違えれば、人命に関わる重大事故につながっていた可能性もあります。
ここは厳正に処分されるべきです。

しかし私は、この問題を単なる「医師個人の不祥事」で終わらせてはいけないと思います。

今回の件で見えてきたのは、舞鶴市の地域医療体制の脆弱さです。

加佐診療所は、舞鶴市西部の加佐地域にある診療所です。
報道では、過疎化が進む加佐地域唯一の医療機関で、年間延べ約3,000人が利用しているとされています。

診療体制は、月曜日が整形外科、火曜日から金曜日が内科です。

つまり、通常であれば診療所としては平日週5日稼働。
内科は火曜から金曜の週4日です。

年間稼働日をおおむね240日と考えると、年間延べ約3,000人の利用者は、1日あたり約12.5人です。

もちろん、医療を単純に人数だけで判断することはできません。

高齢者にとって、近くに診療所がある安心感は大きいです。
車を運転できない人、家族の送迎が難しい人、定期的な診察や薬の処方が必要な人にとって、地域に医療機関があることは重要です。

しかし一方で、1日平均12.5人のために、医師、看護師、事務職員、建物、設備、光熱費を常設で維持することが、本当に最適なのかは検証すべきです。

民間クリニックであれば、採算を取るのはかなり厳しい数字だと思います。

加佐診療所は民間クリニックではありません。
開設者は舞鶴市長です。
つまり、舞鶴市が設置する公的医療機関です。

だからこそ、採算だけでは判断できません。

しかし、公的施設だからこそ、税金を使ってどのように維持しているのか、市民に説明する責任があります。

加佐診療所を維持するのに年間いくらかかっているのか。
利用者1人あたりの行政負担はいくらなのか。
医師確保の見通しはあるのか。
70代の医師1人に依存する体制でよかったのか。
後任確保や複数医師体制の準備はできていたのか。

ここをきちんと検証する必要があります。

さらに調べてみると、加佐診療所から最寄りの内科までは約7km、車で約12分程度です。

また、約15km先には福知山市民病院大江分院もあります。

この距離をどう考えるかです。

もちろん、高齢者や交通弱者にとって、7kmや15kmは簡単な距離ではありません。
都市部の感覚で「近い」と言ってはいけません。

しかし、完全な医療空白地帯かというと、そこも冷静に考える必要があります。

本当に必要なのは、加佐診療所という建物を常設で守ることなのか。
それとも、加佐地域の住民が必要な医療にアクセスできる仕組みを守ることなのか。

私は、ここを分けて考えるべきだと思います。

医療資源は貴重です。

特に地方では、医師も看護師も簡単には確保できません。
市立舞鶴市民病院そのものも、医師数が限られた中で慢性期医療を担っている病院です。

その限られた医療資源を、1日平均12.5人の外来診療に常設で使い続けることが、本当に地域全体にとって最適なのか。

これは聖域にせず、きちんと議論すべきです。

私は、加佐診療所をただちに廃止すべきだと言っているわけではありません。

むしろ逆です。

加佐地域の医療を本当に守るために、今の形が持続可能なのかを見直すべきだと言っているのです。

例えば、常設ではなく週2〜3回の診療に集約する方法もあります。

普段はオンライン診療や電話相談を中心にし、必要なときだけ対面診療につなぐ方法もあります。

通院が必要な方には、タクシー代を補助する方法もあります。

仮に年間延べ3,000人に対して、1回あたり往復5,000円の通院補助を出したとしても、年間1,500万円です。
往復1万円を補助しても、年間3,000万円です。

もちろん、これは単純計算です。
実際には対象者の条件や距離、利用回数、制度設計を細かく考える必要があります。

しかし、医師・看護師・事務職員・建物・設備を常設で維持する費用と比べた場合、通院支援の方が安く、しかも柔軟に医療アクセスを確保できる可能性はあります。

ほかにも、訪問診療、巡回診療、オンライン服薬指導、薬の配送、市民病院や近隣医療機関との連携強化など、考えるべき選択肢はいくつもあります。

大切なのは、廃止ありきの議論ではありません。
同時に、存続ありきの議論でもありません。

必要なのは、限られた医療資源と税金を使って、加佐地域の住民が本当に必要な医療につながれる仕組みを作ることです。

今回、70代の医師が酒気帯び運転で摘発されました。

繰り返しますが、酒気帯び運転は許されません。
そこは厳しく問われるべきです。

しかし同時に、70代の医師が、地域唯一の診療所を長年支え、その医師が外れた瞬間に内科医不在となり、一部休診に追い込まれる体制そのものも問題です。

背景に過重な負担やストレスがなかったのか。
1人の高齢医師に地域医療を依存しすぎていなかったのか。
舞鶴市はそこまで検証する必要があります。

個人を処分して終わり。
頭を下げて終わり。
市民病院から医師を派遣して、とりあえず穴埋めして終わり。

それでは、また同じような問題が起きます。

加佐診療所は、本当に今の形で必要なのか。
加佐地域の医療アクセスをどう守るのか。
常設診療所、週数回診療、オンライン診療、訪問診療、巡回診療、通院タクシー補助。
それぞれの費用と効果を比較したのか。

舞鶴市は、市民に分かる形で説明すべきです。

最後に、もう一つ重要な点があります。

一部報道では、この医師は舞鶴市の会計年度任用職員であったとされています。

つまり、単なる外部の医師ではなく、舞鶴市の職員という立場でもあったということです。

そうであるならば、今回の問題は「医師個人の不祥事」だけではなく、舞鶴市職員による飲酒運転事案としても受け止める必要があります。

本人の責任は当然重大です。

しかし同時に、市役所全体、市民病院全体として、職員の飲酒運転防止策が十分だったのかも問われます。

飲酒運転は、事故が起きてからでは遅い問題です。

舞鶴市は、刑事処分の確定後に懲戒処分を行うだけで終わらせるのではなく、全職員に対する飲酒運転防止の徹底、服務規律の再確認、管理職による指導体制の強化を行うべきです。

特に、市民の命と健康を預かる医療現場で働く職員であれば、より高い倫理観と責任感が求められます。

個人を処分して終わり。
謝罪して終わり。
それでは不十分です。

舞鶴市職員による飲酒運転事案として、組織全体で再発防止策を徹底するべきです。

今回の事件は、加佐診療所の医療体制の脆弱さだけでなく、舞鶴市役所という組織の危機管理と服務規律も問われる問題です。

私は、加佐地域を切り捨てろと言っているのではありません。

むしろ、地域医療を守るためには、現実を直視する必要があると思っています。

施設を守るのか。
医療アクセスを守るのか。

ここを間違えると、看板だけ残って中身が回らない、ということになりかねません。

今回の事件は、医師個人の不祥事であると同時に、舞鶴市の地域医療の限界が見えた事件です。

舞鶴市は、この問題をきっかけに、加佐地域の医療体制と、市職員全体の服務規律を本気で見直すべきです。

やばいぜ舞鶴

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