最終更新日:2026年9月2日

この記事の要約

舞鶴市の市民税を調べていくと、興味深い税収構造が見えてきました。

舞鶴市は個人市民税では近隣市と比べても弱くありません。 一方で、法人市民税は人口規模がほぼ同じ福知山市よりかなり少なく、 人口1人あたりで見ると宮津市も下回ります。

この数字から、 「舞鶴市は観光振興より産業振興に力を入れた方が税収につながるのではないか」 という仮説が見えてきます。

さらに、 観光や産業振興に多額の税金を使うより、道路・子育て・高齢者支援・生活負担軽減など、市民生活へ直接使った方が地域経済に効果があるのではないか という別の仮説も考えられます。

大切なのは、観光客数やイベント参加者数ではなく、 税金を使った結果、市民所得や企業利益が増え、地域にどれだけお金が残ったのか を検証することです。

舞鶴市がこれから目指すべきなのは、 市民からさらに税金を集める街ではなく、市内で稼ぎ、市内で回し、市民の暮らしに利益を残す街 ではないでしょうか。

舞鶴市の令和7年度決算を調べていて、最初に気になったのは市民税の大幅な増収でした。

令和7年度の舞鶴市では、市税全体が前年度より約5億7,316万円増加しています。中でも個人市民税は前年度比17.4%増。一方、法人市民税は0.2%増にとどまっています。舞鶴市自身も、定額減税の終了や物価高騰による賃金上昇などが市税増加の要因になったと説明しています。

私は当初、

「市民税、取りすぎではないのか?」

という視点で調べていました。

ところが、近隣市と比較してみると、もっと興味深いことが分かってきました。

舞鶴市は個人からの市民税は決して少なくない

令和6年度で比較すると、舞鶴市の個人市民税は約37.2億円です。

人口規模がほぼ同じ福知山市は約35.9億円。

つまり、

舞鶴市は個人市民税では福知山市を上回っています。

人口1人あたりに単純換算しても、舞鶴市はおよそ5万円、福知山市はおよそ4万8千円。

「舞鶴は人口が少ないから税収が弱い」という単純な話ではありません。

むしろ市民個人から入ってくる税金については、かなりしっかり確保されています。

ところが――

法人市民税を見ると、まったく違う景色になります。

個人市民税と法人市民税を近隣4市で比べてみる

令和6年度決算を中心に、舞鶴市・福知山市・綾部市・宮津市を比較してみました。

以下は規模感を分かりやすくするため、人口1人あたりに単純換算したものです。

人口規模 個人市民税 人口1人あたり 法人市民税 人口1人あたり
舞鶴市 約7.4万人 約37.2億円 約5万300円 約6.4億円 約8,600円
福知山市 約7.4万人 約35.9億円 約4万8,500円 約13.9億円 約1万8,800円
綾部市 約3.1万人 約12.8億円 約4万1,300円 約3.1億円 約1万円
宮津市 約1.6万人 約6.4億円 約4万円 約1.7億円 約1万600円

※令和6年度決算を中心とした比較です。人口は各市の公表人口をもとにした概数で、人口1人あたり額は税収構造を比較しやすくするための単純計算です。実際に市民1人がこの金額を負担しているという意味ではありません。

福知山市の令和6年度決算では、法人市民税は約13.9億円。舞鶴市の約6.4億円とは2倍以上の差があります。福知山市は法人市民税について、製造業などの企業収益の動向が影響していると説明しています。

綾部市の令和6年度決算では個人市民税約12.8億円、法人市民税約3.1億円です。

宮津市は個人市民税約6.36億円、法人市民税約1.73億円となっています。

福知山市との比較はかなり衝撃的です

舞鶴市と福知山市は人口規模がほぼ同じです。

それなのに法人市民税を人口1人あたりで比べると、

舞鶴市:約8,600円

に対して、

福知山市:約1万8,800円。

約2.2倍です。

一方、個人市民税では、

舞鶴市の方が福知山市より高い。

ここが非常に興味深いところです。

言い換えると、

舞鶴市は市民個人から入ってくる税収は弱くない。
しかし企業から生まれる税収は、福知山市と比べてかなり弱い。

という構造が見えてきます。

さらに驚いたのが宮津市です

私が意外だったのは宮津市との比較です。

宮津市は舞鶴市より人口がはるかに少なく、人口減少も厳しい地域です。

それでも法人市民税を人口1人あたりに換算すると、

宮津市:約1万600円

に対して、

舞鶴市:約8,600円。

人口比で見ると、舞鶴市は宮津市にも及びません。

もちろん、法人市民税は人口によって決まる税金ではありません。

市内企業の数、企業規模、利益、本社機能、業種などによって大きく変わります。

ですから、

「宮津市より低いから舞鶴市政が失敗だ」

などと単純に断定することはできません。

しかし舞鶴市には、

港がある。

造船・製造業がある。

物流がある。

自衛隊関連の需要もある。

一定の産業基盤を持っています。

それにもかかわらず、法人市民税を人口比で見ると宮津市を下回る。

なぜなのか。

これは調べる価値があると思います。

そして宮津市との比較から「観光」の限界も見えてくる

ここでもう一つ考えたいことがあります。

宮津市といえば天橋立。

全国的にも知られた観光都市です。

舞鶴市がこれから観光客を増やし、

「交流人口を増やす」

「観光で地域を活性化する」

と頑張ったとしても、法人市民税という一つの数字だけを見るなら、観光都市・宮津市でも人口1人あたり約1万円です。

一方、製造業など企業活動の厚みを持つ福知山市は約1万8,800円。

もちろん法人市民税だけで観光政策の価値を測ることはできません。

観光には宿泊、飲食、小売、雇用、交流などさまざまな効果があります。

しかし、この比較を見ると、

「観光客を増やせば地域が豊かになる」

という単純な話でもなさそうです。

観光政策で見るべき数字を変えるべきではないか

私は以前から、舞鶴市の観光政策について、

観光客数だけをKPIにする時代は終わった

と考えています。

100万人来ても、お金を使わなければ市民の利益にはなりません。

観光客数よりも、

宿泊者数。

1人あたり消費額。

滞在時間。

市内企業の売上。

市内企業の利益。

市内雇用。

そして最終的に、

どれだけ地域にお金が残ったのか。

ここを見るべきです。

宮津市という全国級の観光地でも法人市民税がこの程度であるなら、舞鶴市が宮津市と同じ方向だけを追いかけても、大幅な税収増につながるとは限りません。

舞鶴には舞鶴の強みがあります。

舞鶴市は観光都市を目指すより、産業都市としての強みを伸ばすべきではないか

港。

製造業。

物流。

造船。

自衛隊。

既存企業。

私は、舞鶴市はこうした産業基盤をもっと生かすべきだと思います。

観光をやめろという話ではありません。

観光は必要です。

しかし観光だけに夢を見るのではなく、

市内企業が稼ぐ。

市内企業同士で仕事が回る。

市内で雇用が生まれる。

給与が上がる。

企業利益が増える。

その結果、

法人市民税も個人市民税も自然に増える。

こちらの方が持続可能ではないでしょうか。

「企業誘致」だけではなく、今ある企業を儲けさせる

行政はよく「企業誘致」と言います。

でも、新しい企業を外から連れてくるだけが産業政策ではありません。

舞鶴にはすでにたくさんの事業者があります。

だから私は、

今ある企業がもっと稼げる街にすること

も重要だと思っています。

例えば、市役所が何千万円という業務を発注する。

その仕事が東京や大阪の会社へ流れれば、お金の多くは舞鶴市外へ出ていきます。

しかし市内企業へ仕事が回れば、

市内企業の売上になる。

従業員の給与になる。

市内で買い物される。

別の地元企業へお金が回る。

そして最終的に税金として市へ戻ってくる。

私はこれを、

「税金の地産地消」

と考えています。

「稼ぐ街」より、まず「漏らさない街」

地域経済を考えるとき、新しいお金を呼び込むことばかり考えがちです。

もちろん、それも必要です。

しかし人口減少時代には、

今あるお金を市外へ漏らさない

ことも同じくらい重要です。

1億円の税金を使っても、その大部分が市外企業へ流出するのと、市内企業・市内労働者へ循環するのでは、地域への効果はまったく違います。

私は舞鶴市が目指すべきなのは、

「稼ぐ街」より、まず「漏らさない街」

だと思っています。

市民税「ぼったくり?」から調べ始めたら、違う問題が見えてきた

今回の調査は、

「舞鶴市の市民税が14.9%も増えている。これ、取りすぎではないの?」

という疑問から始まりました。

しかし数字を分解すると、令和7年度は個人市民税が17.4%増える一方、法人市民税は0.2%増にとどまっていました。

そして他市と比較すると、

舞鶴市は個人からの税収は強い。

しかし、

法人から生まれる税収は福知山市よりかなり弱く、人口比では宮津市も下回る。

という興味深い構造が見えてきました。

私は、市民からもっと税金を取ることで豊かになる街を目指したいとは思いません。

企業が稼ぐ。

働く人の給料が増える。

地域の中で消費される。

企業利益が増える。

その結果として税収が増える。

そんな税収増加なら大歓迎です。

舞鶴市が目指すべき方向は見えているのではないか

観光客を何万人増やした。

イベントに何万人来た。

SNSが何万回見られた。

それだけでは市民生活が豊かになったとは言えません。

行政が本当に見るべきなのは、

市民の所得が増えたのか。

地域企業の利益が増えたのか。

市内にお金が残ったのか。

そして、

市税としてどれだけ戻ってきたのか。

ではないでしょうか。

今回、近隣市と比べてみたことで、舞鶴市の課題が少し違った角度から見えてきました。

市民個人から税金を集める力はある。

では、

地域企業が稼ぎ、法人から税収を生み出す力をどう高めるのか。

私は、そこにこれからの舞鶴市の経済政策を考える大きなヒントがあると思います。

そして観光もイベントも企業誘致も、

「やったこと」ではなく「最終的に市民へいくら利益を残したのか」

で評価する。

舞鶴市には、まだ伸ばせる力があります。

必要なのは、市民からもっと取ることではありません。

市内で稼ぎ、市内で回し、市内に残す。

そんな経済をつくることではないでしょうか。

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