
地方自治体の政策を見ていると、よくこんな言葉が並びます。
「観光で稼ぐ街をつくる」
「交流人口を増やす」
「企業を誘致する」
「新しい産業を育てる」
「地域の魅力を全国へ発信する」
もちろん、地域経済を活性化し、税収を増やす努力は必要です。
しかし、人口減少が進む舞鶴市にとって、本当に最初に取り組むべきことは、そこなのでしょうか。
私は、
「稼ぐ街」を目指す前に、「漏らさない街」を作るべきだ
と考えています。
ここでいう「漏らさない」とは、単に支出を減らすという意味ではありません。
市民から集めた税金を無駄にしない。
必要以上に市外へ流出させない。
できる限り舞鶴市内の企業や働く人へ還流させる。
そうした仕組みを作るということです。
■ 税収を増やすのは簡単ではない
「稼ぐ街を作って税収を増やそう」
言葉にすれば、非常に前向きです。
しかし、実際に税収を増やすのは簡単ではありません。
市民税を増やすには、市民の所得が増えなければなりません。
法人市民税を増やすには、市内企業が利益を上げなければなりません。
固定資産税を増やすには、新たな工場や住宅、設備投資が必要です。
つまり、自治体が新たに100万円の税収を得ようとすれば、その背景には、何千万円、場合によっては何億円もの経済活動が必要になります。
観光事業に税金を投入しても、来訪者が増えただけでは税収は増えません。
イベントに1万人が来ても、その人たちが市内でどれだけ消費したのか。
市内企業にどれだけ利益が残ったのか。
雇用や給与の増加につながったのか。
最終的に市税としていくら戻ってきたのか。
そこまで確認しなければ、本当に「稼いだ」とは言えません。
来場者数が増えた。
SNSで話題になった。
メディアに取り上げられた。
それは成果の一部ではあっても、税収増とは別の話です。
■ 無駄遣いを100万円削れば、100万円が残る
一方で、無駄な支出を100万円削減すれば、その100万円はそのまま残ります。
新たに100万円の税収を得るためには、大きな経済活動が必要です。
しかし、必要性の低い事業や、効果の確認できない支出を100万円見直せば、自治体の財政効果は即座に100万円です。
しかも、その削減した100万円を、道路や側溝、公共施設の修繕など、市民生活に必要な事業へ振り替えることができます。
例えば、その100万円を市内企業に発注すれば、
市内企業の売上になる。
従業員の給与になる。
資材の購入につながる。
市内店舗での消費につながる。
その一部が再び税金として戻ってくる。
こうした循環が生まれます。
つまり、単に100万円を削減するだけではありません。
無駄な支出を削り、使い道を変えることで、同じ税金の価値を高めることができる。
これが「漏らさない街」の考え方です。
■ 舞鶴市の税金は、どこへ流れているのか
舞鶴市が税金を使ったとしても、その支払先が舞鶴市外であれば、お金の多くは市外へ流出します。
市外のコンサル会社。
大手広告会社。
イベント運営会社。
システム開発会社。
調査会社。
都市部の専門業者。
もちろん、市外企業でなければできない仕事もあります。
高度な技術や専門性が必要な場合には、市外企業への発注が必要になることもあります。
問題は、
本当に市外へ発注しなければできない仕事なのか。
という検証が十分に行われているかです。
市職員でできる調査を、コンサル会社へ委託していないか。
市内企業でも対応できる業務を、最初から大規模な契約にまとめ、市外の大手企業しか参加できない形にしていないか。
一度きりのイベントやPR事業に多額の税金を使い、その効果を来場者数や広告表示回数だけで終わらせていないか。
税金を使ったこと自体が成果になってしまえば、地域経済は強くなりません。
大切なのは、
予算をいくら使ったかではなく、そのお金が舞鶴市内にいくら残ったか。
という視点です。
■ 税金にも「地産地消」が必要
農産物や食品では、「地産地消」という言葉がよく使われます。
地域で作ったものを地域で消費する。
それによって、生産者を守り、地域経済を循環させる考え方です。
私は、税金にも同じ考え方が必要だと思います。
市民や市内企業から集めた税金を、できる限り市内へ戻す。
道路工事は市内の土木会社へ。
公共施設の修繕は市内の建築会社へ。
電気設備の更新は市内の電気工事会社へ。
水道設備の修理は市内の設備業者へ。
印刷物は市内の印刷会社へ。
備品や消耗品も、可能な範囲で市内企業から調達する。
もちろん、公平性や価格、品質の確認は必要です。
市内企業だから無条件に発注すればよいという話ではありません。
しかし、価格だけを見て市外企業へ発注し続ければ、市内企業は仕事を失い、従業員も減り、最終的には市内の税収も減ります。
少し安いという理由で市外へ発注した結果、地域経済全体が弱くなるなら、長期的には決して安い買い物ではありません。
■ 小さな工事を数多く発注する
舞鶴市内には、土木、建築、電気、設備など、多くの中小零細企業があります。
こうした企業は、道路、側溝、橋、上下水道、公共施設、防災設備など、舞鶴市の生活基盤を日常的に支えています。
大規模工事だけをまとめて発注すると、元請になれる企業は限られます。
地元の小規模事業者は下請けとなり、利益が薄くなり、支払いまでの期間も長くなります。
そこで必要なのが、
小規模な工事を数多く発注することです。
工事を適切に小口化すれば、市内の中小企業が元請として参加しやすくなります。
元請として受注できれば、利益を確保しやすくなります。
工期が短くなれば、請求から入金までの期間も短縮できます。
資金回収が早くなれば、企業の資金繰りも改善します。
その企業が従業員を雇い続け、機械や車両を維持し、次の世代へ技術を引き継ぐことにもつながります。
これは単なる地元企業への優遇ではありません。
舞鶴市のインフラを将来にわたって維持するために必要な政策です。
■ 地元企業がなくなれば、街の機能も失われる
中小企業が減るということは、単に会社の数が減るだけではありません。
大雪で道路が通れなくなったとき、誰が除雪するのか。
水道管が破裂したとき、誰が修理するのか。
災害で道路や橋が傷んだとき、誰が最初に現場へ駆けつけるのか。
公共施設の電気が故障したとき、誰が対応するのか。
地域の企業がなくなれば、行政が発注しようとしても、仕事を受ける人がいなくなります。
市外の大手企業に依頼すればよいと思うかもしれません。
しかし、災害時には、どの地域も同時に人手を必要とします。
遠方の企業が、舞鶴市を最優先に助けてくれる保証はありません。
日頃から地域に根を張り、土地や道路、設備の状況を知っている市内企業がいること自体が、防災力であり、地域の安全保障です。
地元企業を守ることは、舞鶴市の機能を守ることです。
■ 観光やPR事業は「市内に残った金額」で評価する
観光やイベント、PR事業そのものを否定するつもりはありません。
効果がある事業であれば、実施する価値はあります。
ただし、評価方法を変える必要があります。
これまでのように、
来場者が何人だった。
動画が何回再生された。
新聞に掲載された。
SNSで反応があった。
という数字だけで判断してはいけません。
本当に確認すべきなのは、
市外から何人来たのか。
一人当たりいくら消費したのか。
市内企業の売上はいくら増えたのか。
市内雇用につながったのか。
行政が投入した税金に対し、どれだけ地域へ利益が残ったのか。
という点です。
仮に1,000万円の事業を行い、そのうち700万円が市外企業へ支払われたなら、舞鶴市内に残るのは300万円です。
さらに、地元に残った300万円も、一時的な売上で終わり、継続的な雇用や所得につながらないのであれば、地域経済への効果は限定的です。
逆に、同じ1,000万円を市内の小規模修繕へ使えば、多くの金額が市内企業の売上となり、給与や消費として地域を循環する可能性があります。
税金の使い道は、見た目の派手さではなく、
市内に残る金額と、持続する効果
で比較すべきです。
■ 行政の内製化も重要
何でも外部へ委託すれば、職員の負担は一時的に減るかもしれません。
しかし、外部委託を繰り返すほど、行政内部に知識や経験が残らなくなります。
計画を作るたびにコンサル会社へ依頼する。
調査をするたびに外部業者へ依頼する。
PRをするたびに広告会社へ依頼する。
新しい施策を始めるたびに専門家へ依存する。
これでは、毎回税金が市外へ流出します。
しかも、契約が終われば、ノウハウも市役所から消えてしまいます。
本来、行政が継続的に行う業務については、できる限り職員自身が知識を身につけ、内製化するべきです。
すべてを市役所だけで行う必要はありません。
専門的な部分だけ外部の力を借り、基本的な企画や検証、情報発信は行政が担う。
その方が費用を抑えられ、職員の能力も高まり、次の事業にも経験を生かせます。
外注することが悪いのではありません。
考えることまで丸投げしてはいけない。
ということです。
■ 地元発注にも透明性が必要
市内へ税金を還流させるといっても、特定企業だけが利益を得る仕組みになってはいけません。
随意契約ばかりを増やしたり、同じ事業者へ発注が集中したりすれば、新たな不透明さが生まれます。
必要なのは、
発注を小口化する。
参加条件を分かりやすくする。
登録事業者を増やす。
見積もりや選定理由を公開する。
発注先の偏りを定期的に確認する。
新規事業者も参加できる仕組みを作る。
こうした透明なルールです。
市内企業への発注と、公平性は両立できます。
むしろ、透明な仕組みを整えることで、これまで行政の仕事に参加できなかった小さな事業者にも機会を広げることができます。
税金の市内還流は、利権を作る政策ではありません。
市内全体へ仕事を広く回し、地域経済の土台を強くする政策です。
■ 「安さ」だけではなく、地域全体の効果を見る
行政の入札では、価格が重視されます。
税金を使う以上、安く調達する努力は当然必要です。
しかし、目の前の価格だけで判断すると、地域全体では損をすることがあります。
市外企業が900万円。
市内企業が950万円。
この場合、単純な価格だけを見れば、市外企業が安い。
しかし、市内企業へ支払った950万円の多くが、市内の給与や仕入れ、消費に回るのであれば、地域全体で見た効果は大きくなります。
一方、市外企業へ支払った900万円の大部分が、そのまま市外へ流出すれば、舞鶴市内にはほとんど残りません。
もちろん、価格差が大きすぎる場合や、品質に問題がある場合は別です。
しかし、数%の価格差だけで機械的に市外企業を選ぶのではなく、
地域雇用。
地域での調達。
緊急時の対応力。
税収への還元。
技術の継承。
こうした地域全体への効果も評価すべきです。
■ 人口減少時代は「拡大」より「循環」
これまでの地方行政は、人口が増え、税収が増え、街が拡大することを前提にしてきました。
しかし、舞鶴市はすでに人口減少の時代に入っています。
働く人も減る。
税収も減る。
事業者も減る。
インフラの維持費は増える。
この状況で、かつてと同じように「外から人とお金を呼び込めば成長できる」と考え続けるのは危険です。
企業誘致も、移住促進も、観光振興も、全国の自治体が同じように取り組んでいます。
舞鶴市だけが簡単に勝てるわけではありません。
だからこそ、これから重要になるのは、
街を大きくすることではなく、今あるお金を地域の中で何度も循環させることです。
人口が減っても、地域内で仕事とお金が回れば、街の機能は維持できます。
反対に、人口がまだ一定数いても、税金も消費も市外へ流出し続ければ、地域経済は弱っていきます。
■ 「稼ぐ政策」の前に確認すべきこと
新しい事業を始める前に、行政は最低限、次の点を確認すべきです。
この事業はいくらの税金を使うのか。
そのうち、いくらが市外企業へ支払われるのか。
舞鶴市内には、いくら残るのか。
市内企業や市民の所得は、どれだけ増えるのか。
一時的な効果なのか、継続的な効果なのか。
同じ予算をインフラ修繕や地元発注へ使った場合と比べて、どちらの効果が高いのか。
事業終了後に、誰が責任を持って検証するのか。
こうした数字を示さずに、「地域活性化」「未来への投資」「にぎわい創出」といった言葉だけで予算を通すべきではありません。
■ 私が提案する「漏らさない街」の仕組み
舞鶴市が取り組むべきことは、決して複雑ではありません。
まず、効果の確認できないイベントやPR、コンサル依存の事業を見直す。
次に、市外企業への支出額を把握し、毎年公開する。
公共事業や修繕を適切に小口化し、市内の中小企業が元請として参加できるようにする。
市内調達率や市内発注率を行政の評価指標に加える。
市外へ委託する場合には、市内企業との共同受注や、市内雇用、技術移転を条件に加える。
市役所内でできる業務は内製化し、職員にノウハウを残す。
削減した予算は、インフラ維持、防災、福祉、子育て、地元企業の仕事へ振り替える。
そして毎年、
税金が舞鶴市内にいくら残り、何回循環したのか
を市民に報告する。
これこそが、人口減少時代の現実的な地域経済政策だと思います。
■ 稼ぐことより先に、穴をふさぐ
穴の空いたバケツに、いくら水を入れてもたまりません。
観光客を呼ぶ。
企業を誘致する。
移住者を増やす。
国から補助金を取る。
外からお金を入れる努力をしても、そのお金が市外の企業やコンサルへ流れ続ければ、舞鶴市には残りません。
まず、穴をふさぐ。
無駄な支出を止める。
不透明な支出を見直す。
市外への資金流出を減らす。
税金を市内企業と市民生活へ戻す。
その土台を作った上で、効果のある「稼ぐ政策」を進めればよいのです。
私は、観光や企業誘致をすべてやめろと言っているのではありません。
順番が違うと言っているのです。
まずは、今ある税金を大切に使う。
そして、その税金が市内で循環する仕組みを作る。
それができて初めて、新しく稼いだお金も舞鶴市に残ります。
人口減少が進む舞鶴市に必要なのは、派手な成功物語ではありません。
小さくても、確実に地域へお金が残る仕組みです。
「稼ぐ街」より先に、「漏らさない街」を作る。
無駄な予算を削って、インフラと地元企業を守るために使おうよ。

