舞鶴市が、2027年1月に開催する「二十歳のつどい」を大きくリニューアルします。

これまでの式典中心の内容から、二十歳の若者が企画・運営に参加する「参加型イベント」へ変更し、会場には特設ランウェイを設置。振袖や袴、スーツ、制服などで歩く「MAIZURU二十歳コレクション(仮称)」も予定されています。

若者が主役となる新しい成人式――。

一見すると華やかで前向きな取り組みに見えます。

しかし、私はここで一つ大きな疑問を持ちました。

舞鶴の二十歳の若者たちは、本当にランウェイのある成人式を求めているのでしょうか。

舞鶴市は「二十歳のつどい」を全面リニューアル

舞鶴市によると、今回のリニューアルでは、二十歳の若者による実行委員会を立ち上げ、当日の企画や運営にも主体的に関わってもらうとしています。

市がリニューアルの理由の一つとして挙げているのが、

「これまで参加者の多くが会場外で過ごしていた」

という点です。

そこで、参加者にとってより思い出に残り、舞鶴への関心を深めてもらえるイベントにするため、内容を大きく見直すというのです。

その目玉となるのが、特設ランウェイを使ったファッションショーです。

振袖や袴だけではなく、スーツや制服などでも参加でき、家族や地域の人たちに二十歳になった姿を披露する企画とされています。

「会場の外にいる」ことは本当に問題なのか

しかし、私はまずここに疑問があります。

私は現在53歳ですが、私たちの成人式の頃から、会場には来ても式典には入らず、外で同級生と話している人はたくさんいました。

成人式へ行く目的は、市長や来賓の話を聞くことだけではありません。

久しぶりに同級生と会う。

写真を撮る。

近況を話す。

その後、友人と食事や同窓会へ行く。

こうしたことも、昔から成人式の大切な役割だったはずです。

だとすれば、

「若者が会場外にいる=成人式に魅力がない」

と単純に考えてよいのでしょうか。

まず若者本人に、

「なぜ外にいたのですか?」

と聞くべきではなかったでしょうか。

もしかすると、式典に魅力がないのではなく、友人と再会して話すことこそが成人式へ行く大きな目的なのかもしれません。

約6割が進学する舞鶴の20歳

舞鶴では、高校卒業後に大学や専門学校などへ進学する若者が約6割に上ります。

舞鶴市内には大学がないため、多くは京都市や大阪など、市外へ生活拠点を移します。

さらに市外へ就職する若者もいます。

一方、市内に残った若者の多くはすでに働いています。

つまり、二十歳の実行委員会を作るといっても、

市外の学生は舞鶴にいない。

市外就職者も舞鶴にいない。

市内就職者は仕事がある。

こうした現実があります。

学生であれば授業や課題があります。

物価高で生活費も上がっています。

アルバイトをしなければ生活が厳しい学生も少なくありません。

市内で働いている若者も、平日の仕事や交代勤務があります。

その中で何度も実行委員会に参加し、イベント企画に時間を使える若者がどれくらいいるのでしょうか。

実行委員会は舞鶴の二十歳全体を代表できるのか

二十歳の若者による実行委員会を作ること自体は、良い取り組みだと思います。

しかし、数人の実行委員の意見を、そのまま「舞鶴の二十歳の意見」と考えてよいのかは別問題です。

市外で暮らす学生。

市外で働く若者。

市内企業で働く若者。

交代勤務の若者。

人前に出ることが苦手な若者。

成人式そのものにあまり関心がない若者。

二十歳といっても、置かれている状況はさまざまです。

本当に若者主体の成人式を作るのであれば、実行委員会だけではなく、対象者全体へのオンラインアンケートなどを行い、

「二十歳のつどいに何を求めているのか」

をまず確認するべきではないでしょうか。

今の若者は「キラキラした成人式」を求めているのか

現在の若者を取り巻く経済状況も無視できません。

ファストファッションを利用する。

中古品やメルカリを利用する。

低価格の海外通販を利用する。

服への支出をできるだけ抑え、生活費や学費を優先している若者もいます。

もちろん、成人式の振袖や袴を楽しみにしている若者もいます。

華やかなランウェイを歩いてみたい若者もいるでしょう。

それを否定するつもりはありません。

しかし、成人式にはさまざまな若者が参加します。

人前に出るのが苦手な人。

学校時代の人間関係に良い思い出がない人。

経済的に晴れ着へお金をかけにくい家庭。

アルバイトや仕事で時間に余裕のない人。

行政が考える「キラキラした二十歳像」に、すべての若者が当てはまるわけではありません。

ランウェイが「主役と脇役」を作らないか

特設ランウェイという企画には、もう一つ気になる点があります。

人前に出ることが得意で、華やかな服装を楽しめる若者にとっては、非常に楽しいイベントになるでしょう。

一方、そうではない若者から見れば、

「一部の目立つ人だけが主役になるイベント」

と感じる可能性もあります。

学校時代にあった「目立つグループ」と「目立たないグループ」のような空気を、二十歳の節目でもう一度作ることにならないでしょうか。

成人式は、誰かを選抜して輝かせるイベントではありません。

行政が作る公的な行事だからこそ、

ランウェイを歩く人も、歩かない人も同じ主役

であるべきです。

企業協賛にも「ランク」がある

今回の「二十歳のつどい」では、企業や団体から協賛金や協賛物品も募集されています。

協賛金額によって、

「レジェンド」

「プラチナ」

「ゴールド」

「シルバー」

「ブロンズ」

といった区分が設けられています。

高額な協賛では、企業PRブースや企業名の紹介だけでなく、企業の制服などでランウェイに出演できる仕組みも用意されています。

企業が地域の若者の門出を応援すること自体は、非常に良いことです。

協賛によって市民の税負担を減らせるのであれば、それも評価できます。

しかし、

成人式という公的な行事で、たくさんお金を出した企業ほど目立てる仕組み

が本当に必要なのでしょうか。

若者側では「目立つ人」がランウェイへ。

企業側では「お金を出せる企業」が前へ。

結果として、若者にも企業にも「格付け」のような構造が生まれてしまわないか。

私はそこに疑問を感じます。

企業制服でランウェイ――成人式か企業PRか

さらに、高額協賛企業については企業制服などでランウェイへ出演できる仕組みもあります。

地元企業が若者の門出を応援することと、成人式の中で企業広告を行うことは、同じではありません。

地域企業の協賛は歓迎しつつも、

「成人を祝う公的行事」と「企業PRイベント」の境界

は明確にしておく必要があります。

成人式は就職説明会でも、企業展示会でもありません。

企業がお金を出した金額に応じて露出が増えるのであれば、その仕組みが公的行事として適切なのか、一度立ち止まって考える必要があります。

市の予算は159万1,000円

令和8年度舞鶴市一般会計予算説明書では、「二十歳のつどい開催経費」として159万1,000円が計上されています。

決して巨額の予算ではありません。

また企業協賛によって、市税だけに頼らず企画を充実させるという考え方にも理解できる部分があります。

ただし、協賛金について市は、実行委員会企画の運営や会場設営などに活用するとしています。

そうであるなら、

市の159万1,000円で何を行うのか。

協賛金で何を行うのか。

ランウェイにはいくら必要なのか。

その内訳は明確にしてほしいと思います。

協賛金を使うなら、若者全員に還元してはどうか

私は企業協賛そのものには反対ではありません。

むしろ地元企業が二十歳の門出を応援する仕組みは、もっと活用してよいと思っています。

ただ、協賛企業をランク分けして広告露出を増やすよりも、協賛金を参加する若者全体へ還元する方法があるのではないでしょうか。

例えば、式典後に交流スペースを設けます。

そこに企業協賛でソフトドリンクや軽食を用意する。

中学校や高校時代の恩師にも来てもらう。

学校別に集まれるスペースを作る。

写真を撮れる場所を用意する。

久しぶりに会った友人や恩師と、ゆっくり話せる時間を作る。

私は、こうした企画の方が多くの若者に喜ばれる可能性があると思います。

ランウェイでは「出演する人」と「見る人」に分かれます。

しかし交流会なら、基本的には全員が参加できます。

晴れ着でもスーツでも普段着でも関係ありません。

目立つことが好きでも、苦手でも関係ありません。

「外にいる若者」への答えにもなる

舞鶴市は、これまで参加者の多くが会場外で過ごしていたことを課題の一つとして挙げています。

もし若者が外にいる理由が、

「同級生と話したいから」

なのであれば、解決方法は非常にシンプルです。

「式典の中に入ってもらうために、もっと派手なイベントを作ろう」

ではなく、

「中でも友人や恩師と楽しく過ごせる場所を作ろう」

と考えればいいのではないでしょうか。

ソフトドリンクや軽食があり、

久しぶりの友達がいて、

恩師もいる。

写真も撮れる。

自由に話せる。

企業協賛を使うのであれば、企業の広告ステージを作るより、

「舞鶴の企業が、二十歳のみんなに飲み物と軽食をプレゼントします」

という方が、企業にとっても良いPRになるのではないでしょうか。

それこそ、

地域全体で二十歳を祝う成人式

だと思います。

本当に「若者主体」なのか

舞鶴市は、二十歳の若者による実行委員会が企画や運営に関わるとしています。

これは方向性としては良いことです。

ただし、本当に若者主体なのであれば、

まず実行委員会ができる。

若者が意見を出す。

その中から企画が決まる。

という順番になるはずです。

ところが今回、ランウェイや企業協賛制度までかなり具体的に設計されています。

そこで確認したいのが、

誰が最初にランウェイを提案したのか。

そして、

実行委員会ができる前から企画が決まっていなかったのか。

という点です。

大人がランウェイもスポンサー制度も用意して、その舞台の上で若者に「主体的に輝いてください」と言うのであれば、それは本当の意味での若者主体なのでしょうか。

若者を主役にすることと、若者を演出に使うことは違う

行政がイベントを作ると、どうしても「成功させたい」という意識が生まれます。

人が集まった。

会場が盛り上がった。

SNSで写真が拡散された。

メディアに取り上げられた。

そうしたものが成果として見えやすいからです。

しかし成人式の場合、そこを目的にしてはいけないと思います。

若者を主役にすることと、若者をイベントの演出に使うことは違います。

大人が考えた華やかな舞台で若者に「輝いてみせてもらう」ことが、本当に若者主体なのか。

ここは慎重に考えてほしいと思います。

主役は成人式ではない

私は、新しいことをするなと言っているのではありません。

若者が企画に参加する。

企業が地域の若者を応援する。

成人式をより楽しいものにする。

どれも方向性として否定するものではありません。

ただ、一番大切なことを忘れてはいけないと思います。

主役は「成人式」というイベントではありません。

主役は、その日二十歳を迎えた若者一人ひとりです。

ランウェイを歩きたい人もいる。

友達と話していたい人もいる。

静かに式典へ参加したい人もいる。

成人式そのものに参加したくない人もいる。

それでいいのではないでしょうか。

行政が成人式を「成功させる」ために、若者をイベントへ合わせるのではなく、

さまざまな若者が安心して集まり、それぞれの形で二十歳の節目を祝える場を用意する。

それこそが行政の役割だと思います。

舞鶴の若者は何を求めているのか

今回、私が最も知りたいのは単純なことです。

舞鶴の二十歳の若者は、本当にこの成人式を求めているのでしょうか。

ランウェイを求めているのか。

企業協賛イベントを求めているのか。

実行委員会に参加したいのか。

それとも、

久しぶりに友人と会い、

恩師と再会し、

家族に晴れ姿を見せ、

みんなで写真を撮り、

二十歳という節目を祝いたいだけなのか。

行政が考える「若者が喜びそうな成人式」と、実際の若者が求めている成人式が同じとは限りません。

だからこそ、まず若者本人の声を聞くことが必要です。

成人式を輝かせる必要はありません。

輝くべきなのは、二十歳を迎える一人ひとりです。

舞鶴市の「二十歳のつどい」全面リニューアルについて、今後も企画決定の経緯、実行委員会の内容、予算、協賛金の使途、企業協賛のあり方などを確認していきたいと思います。

引用元・参考リンク

本記事の作成にあたり、以下の公開資料・記事を参照しました。

※記事本文では、公開資料から確認できた事実と、筆者の意見・考察を分けて記載しています。

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