
― 情報公開で分かった“数字のある産業”と、評価しない行政 ―
舞鶴カニの検証に続いて、
「では、舞鶴茶はどうなのか?」
という声が自然に上がりました。
同じく舞鶴市が「地域ブランド」として掲げる舞鶴茶。
こちらについても、市民オンブズマンまいづるとして
情報公開請求を行いました。
結論から言えば、
舞鶴茶は、舞鶴カニとは全く違う姿を見せました。
令和6年度・舞鶴茶の生産金額は約1億2,000万円
情報公開資料から読み取れる、
令和6年度の舞鶴茶の生産金額は次のとおりです。
- 碾茶(てんちゃ):42,099,341円
- 緑茶:78,666,578円
これを合計すると、
👉 生産金額合計:120,765,919円(約1億2,100万円)
これは、
わずか19戸の生産者による実績です。
19戸で1億2,000万円超
これは「小規模だが強い産業」
単純計算でも、
- 1戸あたり平均:約630万円超
もちろん実際には差がありますが、
地域農業としては非常に健闘している数字です。
しかも、
- 茶園面積は約11ヘクタール
- 前年比102%で微増
- 成木園が約3分の2を占める
👉 産業として“踏ん張っている”ことが、数字で分かる
これは、
「イメージだけのブランド」ではありません。
令和7年度は、さらに大きな可能性がある
さらに重要な点があります。
令和7年度については、
世界的な緑茶人気の高まりにより、
売値が2倍から3倍になった
という実態が、
現場レベルではすでに確認されています
(※ 現在は未集計)。
仮に単純計算でも、
- 令和6年度:約1.2億円
- 令和7年度:2.4億円〜3.6億円規模の可能性
👉 19戸で、ここまでの付加価値を生む産業
これは、
舞鶴市の中でも数少ない
**「世界市場とつながる地域産業」**と言えます。
それでも舞鶴市は「人」を数えていない
ところが、
ここで決定的な問題が明らかになります。
舞鶴市は、
- 生産戸数
- 茶園面積
- 生産量
- 生産金額
これだけ詳細に把握していながら、
👉 「茶葉生産に従事する従業員数」は把握していない
として、
行政文書不存在の決定を出しています。
なぜ、ここまで価値のある産業を評価しないのか
これは、
単なる事務の問題ではありません。
- 雇用がどれだけ生まれているのか
- 高齢化は進んでいるのか
- 後継者はいるのか
- ブランド施策が誰を支えているのか
これらを検証せずに、
どうやって産業政策を語るのか。
舞鶴カニとの決定的な違い
ここで、舞鶴カニと舞鶴茶を比べると、
違いははっきりします。
| 項目 | 舞鶴カニ | 舞鶴茶 |
|---|---|---|
| 担い手 | 3〜4隻 | 19戸 |
| 年間実績 | 約5,000万円 | 約1.2億円 |
| 将来性 | 縮小傾向 | 拡大の可能性 |
| 国際性 | ほぼなし | 世界的需要 |
| 問題点 | 規模不足 | 評価不足 |
👉 舞鶴茶は「育てる価値がある」のに、
市がそれを戦略的に扱っていない。
市民としての結論
舞鶴茶は、
- 小規模だが
- 数字があり
- 世界とつながり
- 将来の伸びしろがある
**数少ない「本物の地域産業」**です。
それにもかかわらず、
舞鶴市は
人を数えず
成果を評価せず
ブランドという言葉だけを使っている
これは、
あまりにも、もったいない行政です。
ただ一つ、残念な現実もある
最後に、あえて触れておかなければならない現実があります。
それは、
舞鶴で生産された茶葉の多くが、
「舞鶴茶」としてではなく、
圧倒的に「宇治茶」として流通しているという事実です。
これは決して舞鶴の茶が劣っているからではありません。
むしろ逆です。
宇治茶は、
すでに国内外で確立した世界的ブランドであり、
品質・流通・価格形成の面で
圧倒的な信頼と実績を持っています。
「舞鶴茶を広めたい」という思いは理解できる
市民として、
「舞鶴で作られた茶を、舞鶴茶として広めたい」
という気持ちは、よく分かります。
地域の名前が前に出ることに、
誇りを感じるのは自然なことです。
しかし、ここで一度、
行政としての現実的な判断が必要ではないでしょうか。
世界ブランド「宇治茶」に乗るという選択
舞鶴茶は、
- 生産規模は小さい
- しかし品質は高く
- 実際には宇治茶として世界市場につながっている
つまり、
舞鶴茶はすでに
「宇治茶ブランドの一部」として
世界と接続されている
とも言えます。
であれば、
- 無理に新たなブランドを作る
- 知名度ゼロからPRする
- 限られた税金を分散させる
よりも、
👉 世界的に確立した宇治茶ブランドに
戦略的に「乗る」方が、
生産者にとって現実的で、利益にもつながる
という考え方は、
十分に合理的です。
本当に守るべきものは何か
行政が考えるべきなのは、
- 名前を前に出すことか
- ロゴを作ることか
- イベントを打つことか
ではなく、
👉 舞鶴で茶づくりを続ける19戸の生産者が、
これからも生計を立て、
次の世代につなげられるかどうか
その一点のはずです。
市民としての問い
舞鶴茶を「独立ブランド」として育てるのか。
それとも、
宇治茶という世界ブランドの中で
舞鶴の価値を最大化する道を選ぶのか。
市民として、
そして税金を出す立場として問いたいのは、
それは誰のためのブランド戦略なのか
という一点です。
やばいぜ舞鶴は、
これからも
生産者の現実と数字に立脚した視点で、
この問題を追い続けます。

