■ はじまり ― 議会報の「公正さ」への疑問から

令和7年の年明け、舞鶴市議会が発行した「議会報 新年号」。
その誌面にはこう書かれていました。

「市議会議員は、選挙区内に年賀状や暑中見舞いなどを出すことが禁じられています。」

ところがその同じ年の元旦、一部議員がこの規定に反して年賀状を送付していたことが明らかになりました。
議会事務局や議長は違法性を認識していながら、口頭注意だけで終わらせ、懲罰委員会への付託や処分記録も行わなかったというのです。

「自らが『禁止』を広報しておきながら、その違反を黙認するのはおかしい」
――この矛盾を正すため、私たちは住民監査請求に踏み切りました。


■ 請求の内容 ― 「広報費の支出は不当だ」との主張

監査請求では次の点を問題としました。

  • 対象は、議会報新年号の印刷経費(約98万円)。
    これは令和6年度「議会報発行事業費」490万円のうちの1号分にあたります。
  • 議会が違法行為を黙認したまま広報を発行したことで、
    広報の公正性が損なわれ、市民を誤導する内容になった。
  • よってこの支出は目的外であり不当な財務会計行為である。
  • 市としては、支出金の返還や再発防止措置を講ずべきである。

つまり、「違法を知りながら広報した議会報に税金を使うのはおかしい」という市民の声を、正式な監査手続で問うたのです。


■ 監査委員の判断 ― 「請求の要件を満たさず却下」

令和7年11月7日、舞鶴市監査委員から次のような通知が届きました住民監査請求に基づく監査について(通知)

監査委員は、

「本件請求は地方自治法第242条に定める『財務会計上の行為』の違法・不当を摘示したものとは認められない」

として、請求を却下しました。

その理由はこうです。

  • 監査請求はあくまで財務会計上の違法・不当な行為が対象。
  • 今回の主張は、議員Aや議長Bの対応の不適切さを述べているに過ぎず、
  • 印刷費の支出という「会計行為そのもの」に違法・不当があるとは認められない。

つまり、「議員個人や議長の対応の問題」と「支出そのものの違法性」は別物であり、
財務会計上の不当行為とは言えないというのが監査委員の結論でした。

■ 結末 ― 請求は棄却、それでも真実は消えない

監査結果としては「棄却」という形で幕を閉じました。
しかし、住民監査請求が退けられたからといって、問題の本質が消えるわけではありません。

長年にわたり、舞鶴市議会では公職選挙法違反が黙認されてきたという現実があります。
その構造的な怠慢が、今回の請求によって初めて明るみに出たのです。
少なくともこの監査請求を通じて、議会内部でも「これは違法である」という認識が再び共有されました。
その結果、来年以降の新年の年賀状は廃止される流れになると考えられます。

この点において、私たち市民の行動は決して無駄ではありませんでした。
沈黙を破り、声を上げたことで、議会に“再発防止の意識”を植えつけることができたのです。


■ それでも問われる「責任」

とはいえ、今回の棄却通知で見逃してはならないのは、
水嶋議員による公職選挙法違反の事実そのもの、
そして議長が問題を有耶無耶にした対応の違法性は何ら解消されていない
という点です。

監査委員は「財務会計上の違法・不当行為ではない」と判断しましたが、
だからといって政治倫理上の問題が消えるわけではありません。
むしろ、議会のガバナンス不全を象徴する出来事として、
今後さらに追及を強めていく必要があります。


■ これからの市民の役割

もし今後も、公職選挙法に違反して年賀状を送る議員がいれば、
それは悪質かつ意図的な行為です。
そのような議員は、市民の信頼を踏みにじる存在であり、
市民として徹底的に糾弾しなければなりません。

今回の監査請求は、その第一歩。
形式的には棄却でも、実質的には議会に対して強烈な警鐘を鳴らすものとなりました。

「法を守らない者に、市民を守る資格はない。」

この原則を胸に、私たちは今後も事実を追い、
市政の透明化と倫理回復を目指して――
さらなる追及の手を緩めることはありません。

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