3.1 「秘密会」で始まる隠蔽構造

静渓ポンプ場の損害賠償案件は、
令和6年9月定例会において行政側の要請により秘密会として審査された。
理由として市側は、

「工事設計書・見積書・請求書などに記載された単価や経費の内訳が公開できないため」
と説明している静渓ポンプ場契約解除に伴う損害賠償額決定に関する説明について。

しかし、損害賠償額の審査は市民の税金支出に直結する公共性の高い事項であり、
本来は最も透明性が求められる。
それを「行政が出せないと言ったから非公開にした」という議会判断は、
公開原則(地方自治法第115条)を逸脱した極めて不当な対応である。


3.2 本会議採決を経ずに「秘密会了承」した手続の不備

秘密会は地方自治法第118条により、

「出席議員の3分の2以上の多数による議決」でのみ成立する。

ところが本件では、
分科会レベルで行政提案を“了承”したのみで正式な採決が行われていない。
議会事務局による確認でも、
「分科会で協議し了承したが議決はしていない」と説明されている。

つまり、この秘密会は法的根拠を欠いた非公式の非公開審査であり、
手続上も「秘密会」として成立していない。


3.3 分科会議事録の扱い

秘密会の開催を決定した分科会の議事録は現在作成中であり、
形式上は地方自治法第123条の要件を満たす可能性がある。
ただし、議事録が完成しても、
「秘密会に関する内容」であるため公開は困難と見られている。

このため、市民は「どの議員がどのような理由で秘密会に賛同したのか」を確認できず、
意思決定の過程が実質的に不可視化されたままとなっている。


3.4 議長文書に関する「議事録未作成」の問題

秘密会後、議長が市民の申し出に応じて発行した説明文書(令和7年11月4日付)については、

「議会内で協議を行ったが、議事録は作成していない」
との説明が事務局より確認されている。

つまり、議長説明文書の内容は議会としての正式決定ではなく、
協議記録も存在しない非公式文書
である。

この点が最も深刻である。
議会として「どのような議論を経て」「どのような合意により」
説明文書を出したのか、その痕跡が一切残されていない。

💬 「議会で協議はしたが、記録がない」
というのは、説明責任の根拠を自ら放棄する行為である。


3.5 議長の説明と矛盾する「秘密会の趣旨」

議長は説明文書で、

「推測を交えて例として架空の金額を述べた」
「誤解を招く発言であり反省している」
と述べている静渓ポンプ場契約解除に伴う損害賠償額決定に関する説明について。

しかし、これが「議会協議を経た正式な見解」ではない以上、
文書の法的位置づけは極めて曖昧である。

また、「推測を述べた」という発言は、
守秘義務の建前と相反するものであり、
秘密会制度の正当性を自ら崩している。


3.6 「公開原則違反」と「議会責任の空洞化」

今回の一連の対応を整理すると次の通りである。

項目実態評価
秘密会の理由行政が出せないと言ったため❌ 公益性の要件なし
開催手続分科会了承のみ(採決なし)❌ 手続瑕疵
分科会議事録作成中だが非公開予定⚠️ 実質的な透明性なし
議長文書協議議事録未作成❌ 法的根拠欠如
市民説明文書での対応❌ 議会としての責任放棄

このように、
市民が議会の判断根拠を検証できる手段が存在しないことは重大であり、
「議会制民主主義の自己否定」とも言える。


3.7 「形式的合法・実質的違法」の構造

舞鶴市議会は、形式的には「分科会による審査」という体裁を保っているが、
その実態は行政が提示した資料を非公開で審議し、
市民には説明を拒む「閉鎖的決定構造」である。

法律上は「秘密会議決」を経ていないため、
形式上は“合法”のように見えるが、
実質的には秘密会そのものであり、公開原則違反の実態を伴っている。


3.8 “分科会形式”を装った実質的な全議員秘密会

さらに重大なのは、
今回の「分科会秘密会」が分科会メンバーだけでなく、全議員を出席対象として開催された点である。

通常、分科会は常任委員会の下部組織として構成員が限定されるが、
このケースでは**他の全議員を招き入れて実質的な“全議員会議”**として実施された。

これにより、形式上は「分科会による秘密会」だが、
実態としては**「議会全体による秘密会」**に等しい。

地方自治法第118条が定めるように、

「出席議員の3分の2以上の多数による議決」でのみ秘密会は成立する。

しかし、今回のように全議員を呼び込んで分科会形式をとれば、
この「議決要件」を形式的に回避することが可能となる。

💬 言い換えれば、「秘密会の議決を経ずに秘密会を実施する」
という制度の抜け道が意図的に利用された疑いがある。

この手法は、

  • 法定手続きを経ずに実質的な秘密会を開催した点で制度の濫用
  • 公開原則を骨抜きにし、議会への信頼を著しく損なう行為
    と評価せざるを得ない。

3.9 市民オンブズマンとしての対応方向

本件の本質は、

「秘密会の濫用」と「無記録の説明行為」が連鎖して、
市民の知る権利と議会の監視機能が同時に失われていること
にある。

したがって、市民オンブズマンとしては以下の対応を検討すべきである。

対応内容
① 公開質問書「分科会秘密会に全議員を参加させた理由」「議決を経なかった法的根拠」について議長宛に質問。
② 監査請求「秘密会要件の回避」という制度濫用行為を地方自治法第199条に基づき監査対象化。
③ 制度改善提案「全議員出席型分科会の運用禁止」および「秘密会開催要件の厳格化」を議会規則に明文化する。

🔍 まとめ

舞鶴市議会は、分科会形式を用いて全議員が出席する実質的な秘密会を実施し、
地方自治法第118条の「3分の2議決要件」を形式的に回避した可能性がある。

さらに、議長説明文書については協議記録が存在せず、
市民が検証できない「無記録・無責任」の状態にある。

この構造は、議会制民主主義における公開原則・記録原則・説明責任の三原則
根本から踏みにじるものであり、
市民オンブズマンとしては制度的是正を強く求める必要がある。

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