1.1 市が議会に示した「損害賠償額」は一部にすぎない

舞鶴市は令和6年9月定例会において、静渓ポンプ場の契約解除に伴う損害賠償額6,676万円(=66,760,100円)を議決案件として上程した。
この金額のみが議会・報道・市民への説明において中心的に扱われた結果、多くの市民が「静渓ポンプ場の損失=約6,700万円」と誤認している。

しかし、市民オンブズマンの情報公開請求により、実際にはこの損害賠償金のほかに、当初の工事費・設計費・現状復旧費・検証会議費用などがすでに支出されていることが判明した。
これらを合わせると、実際の支出総額は3億7,000万円を大きく上回る


1.2 市の回答資料による支出内訳(令和7年10月20日回答)

区分内容金額(円)財源
1工事費(土木工事)238,583,400一般財源・国補助金(各50%)
2設計費(当初設計・地盤調査等)61,471,560一般財源・国補助金(各50%)
3検証会議費用380,756一般財源(100%)
4現状復旧費8,104,800一般財源(100%)
5損害賠償費(施工協議に基づく工事費)66,760,100一般財源(100%)
合計375,300,616円

(出典:市民オンブズマンまいづるへの回答資料20251020市民オンブズマンまいづるへの回答資料 (1))


1.3 総支出額は「約3億7,530万円」

以上の金額を合算すると、静渓ポンプ場事業に係る市の支出は
**総額375,300,616円(約3億7,530万円)**に達する。

このうち一般財源分の多くに起債(借金)が当てられており、
市民が将来にわたって返済を負担する構造になっている。
また、国の補助金分についても、事業中止の経緯次第では返還が求められる可能性
が残されている。


1.4 「損害賠償金6,676万円」は氷山の一角

舞鶴市が議会に示した損害賠償額には、次のような重要な費用が含まれていない

  1. 施工業者が被った逸失利益(利益喪失分)
     … 市と業者の間で現在も協議中であり、確定していない。
      最終的な金額次第では、損害賠償総額がさらに増加する見込み。
  2. すでに契約済みのポンプ機械本体・電気設備工事費などの未執行契約分
     … 契約解除に伴い、市側の負担や補償が発生する可能性が高い。

これらを加味すれば、最終的な総損失は4億円を超える規模に達する可能性がある。


1.5 市の対応:責任回避と「有耶無耶処理」の傾向

舞鶴市と議会は、損害賠償金のみを表面化させることで、
本件全体の財政損失を矮小化しようとしていると見られる。

特に、施工業者が本来得られたはずの**正当な利益(逸失利益)**を軽視し、
市が「優位な立場」を利用して交渉を有耶無耶に進めている実態が懸念される。

行政の失敗に起因する事業中止であるにもかかわらず、
市はその責任を曖昧にし、民間事業者の損失を過小評価している可能性がある。

これは、公正な契約関係を損ない、今後の公共工事発注の信頼性にも深刻な影響を及ぼす。


1.6 市民への影響と今後の焦点

  • 起債償還などを通じ、最終的な損失は市民負担に帰着する。
  • 損害賠償協議の行方次第で、総支出がさらに拡大するおそれ。
  • 公開されていない契約情報や補助金返還リスクを含め、
     市が正確な全体像を公表していないこと自体が重大な説明責任違反

🔍 まとめ

静渓ポンプ場の「損害賠償額6,676万円」は実際の損失のごく一部であり、
すでに支出済みの工事・設計・復旧経費を含めると3億7,000万円を超える。

しかも、逸失利益・未契約処理費・設備関連費が未確定であることから、
総損失はさらに膨らむ可能性が高い。

舞鶴市は本件を有耶無耶に処理し、責任回避を図る一方で、
民間事業者の正当な損害を軽視し、市民への説明を怠っている。

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