※本記事は、舞鶴市が情報公開請求により開示した公式行政文書をもとに構成しています

舞鶴市が、FMまいづるを運営する一般財団法人有本積善社に対し、令和2年度以降、少なくとも約1億2,000万円の税金を支出していたことが分かった。
内訳は、市政広報を目的としたラジオ放送委託、防災・危機管理名目の業務、さらに五老ヶ岳公園の指定管理料にまで及ぶ。
しかし、市はこれらの支出について、放送の聴取率や広報効果、防災情報の到達状況などを検証した資料を保有していないことが、情報公開請求で明らかになった。
検証なき巨額支出は、適正な行政運営と言えるのか。
市民オンブズマンまいづるは、公金の流れとその実態を追った。

① 明らかになった事実(情報公開請求の結果)

市民オンブズマンまいづるが行った
「放送されたラジオ番組の推定視聴者数、聴取率などの視聴動向がわかる資料」
についての情報公開請求に対し、舞鶴市は次のように正式回答しました。

  • 行政文書は存在しない
  • 不存在理由:「当該文書を取得していないため」
  • 担当課:政策推進部 広報広聴課

つまり――

舞鶴市は、FMまいづる(有本積善社)に多額の税金を支出しているにもかかわらず、
そのラジオ放送が「どれだけ市民に聴かれているか」を示す資料を一切持っていない

という事実が、市自身の公式文書で確定しました。


② 何が問題なのか(市民感覚とのズレ)

これは一言で言えば、

「効果測定を一切しないまま、税金を払い続けている」

という状態です。

民間企業であれば、

  • 広告
  • 広報
  • 委託事業

いずれも
✔ 視聴者数
✔ 到達率
✔ 効果

を確認せずに支出することはあり得ません

それを税金で行っている行政が、

  • 聴取率を調べていない
  • 推定視聴者数すら把握していない

これは、市民から見て到底納得できるものではありません。


③ 法的に見た問題点

1️⃣ 地方自治法の趣旨との関係

地方自治法第2条14項は、自治体に対し

「最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」

と定めています。

しかし、

  • 効果を測定していない
  • 成果指標(KPI)が存在しない

状態では、
「最大の効果を挙げているかどうかの検証すら不可能」です。

👉 これは行政運営の基本原則に反する疑いがあります。


2️⃣ 業務委託契約としての異常性

FMまいづるへの支出が

  • 業務委託
  • 広報委託
  • 放送委託

であるならば、通常は

  • 業務の目的
  • 成果の確認方法
  • 効果測定

が契約設計に含まれるべきです。

それが一切ない、あるいは
市が結果を把握していないというのは、

契約管理そのものが極めてずさん

と言わざるを得ません。


④ 「広報だから効果測定できない」は通用しない

行政がよく使う言い訳に、

「広報事業は数値化が難しい」

があります。

しかし現実には、

  • ラジオ局自身が広告営業のために
    聴取率調査を行っている例は多数
  • 少なくとも
    ✔ 推定
    ✔ 外部調査
    ✔ 独自アンケート

など、方法はいくらでもある

👉 「調べていない」こと自体が問題なのです。

⑤ 支出の全体像(R2~R7・判明分)

開示文書によれば、舞鶴市は 令和2年度から令和7年度にかけて、FMまいづる(有本積善社)に対し、次のような支出を継続しています。

主な支出類型

  • FMまいづる活用情報発信事業委託業務
  • コミュニティFM中継局の設置・運用・管理
  • 免許申請、免許変更届出業務
  • 中継局の点検・臨時点検・緊急点検
  • 電気代・電波利用料

いずれも 相手方は一貫して「一般財団法人有本積善社」 です


⑥ 金額の規模感

🔹 毎年ほぼ固定で支払われている「情報発信事業委託」

  • 月額 269,500円
  • 年額換算:約 323万円
  • 令和2~4年度はほぼ毎月定額で支出 令和5年度~毎年年額で支出

👉 内容の成果を測定しないまま、サブスクのように税金が流れている構図


🔹 施設・中継局関連での高額支出

特に目立つのが次の支出です。

  • 令和3年度
    五老スカイタワー再生可能エネルギー導入及び
    コミュニティFM中継局設置等工事監理業務委託

    👉 12,855,460円
  • 中継局の運用管理、点検、免許関連業務が
    毎年 数十万~数百万円単位で継続

🔹 令和5・6年度も支出は継続

令和5年度・6年度も、

  • 情報発信事業委託:約 323万4千円/年
  • 中継局管理・電気代・点検費などを合算すると
    👉 年500万~600万円規模

で推移しています


⑦ 最大の問題点

すでに舞鶴市は公式に、

FMまいづるの推定視聴者数・聴取率などの資料は「取得していない」

と認めています。

つまり――

年間数百万円、累計では数千万円規模の税金を投入しながら、
その放送が「誰に、どれだけ届いているのか」を
市は一切把握していない

という構図が、
金額資料と不存在決定通知書の両方から確定しました。


⑧ 法的・行政的に見た重大な論点

1️⃣ 地方自治法との関係

  • 地方自治法2条14項
    👉「最少の経費で最大の効果」

効果を測定していない事業は、
この原則に適合しているか検証不能です。


2️⃣ 委託契約の適正性

  • 成果指標なし
  • KPIなし
  • 効果検証なし

👉 契約管理として極めて不十分
👉 監査対象として十分な疑義

FMまいづる(有本積善社)への公金支出は「広報」だけでなく、「危機管理・防災」名目でも行われていました。
しかも金額・内容ともに軽視できないものです。

⑨ 危機管理名目での支出の全体像

開示されたのは
「支出状況一覧(一般社団法人有本積善社分)(令和2年度~令和7年度)」
(担当:危機管理・防災課)です

🔹 主な支出内容(抜粋)

【令和2年度】

  • 緊急割込放送設備設置業務委託
     👉 3,251,270円
  • 自動起動ラジオ
     👉 5,225,000円

合計 約847万円


【令和3年度】

  • 舞鶴総合防災訓練 司会進行業務
     👉 48,400円

【令和5年度】

  • 舞鶴総合防災訓練 司会進行業務
     👉 48,400円

【令和6年度】

  • 緊急割込放送設備 運用管理業務委託
     👉 304,484円

【令和7年度】

  • 舞鶴総合防災訓練 司会進行業務委託
     👉 48,400円

⑩ ここが決定的に「危ない」

❗ 危機管理なのに「実効性検証」が見えない

危機管理・防災は、

  • 命に直結
  • 空振りが許されない
  • 「聞こえたか」「届いたか」が最重要

にもかかわらず――

FMまいづるの聴取率・視聴者数・到達範囲を
市は一切把握していない

ことが、すでに公式に確認されています。

つまり、

「本当に市民に届くか分からないメディア」に、
防災・危機管理名目で多額の税金を投じている

という構図になります。


⑪ 広報よりも深刻な法的論点

1️⃣ 災害対策基本法との関係

自治体には、

  • 災害情報を確実に住民へ伝達する責務

があります。

その手段としてラジオを使うなら、

  • 到達率
  • 聴取環境
  • 代替手段の有無

を検証していないのは、
制度設計として重大な欠陥です。


2️⃣ 危機管理を「ブラックボックス」にしていないか

「防災」「危機管理」という言葉は、

チェックが甘くなりやすい“魔法の言葉”

です。

今回の資料からは、

  • 同じ団体に集中発注
  • 実効性評価なし
  • 検証資料なし

という典型的な構図が読み取れます。

⑫ 資料が示している「動かしがたい事実」

本資料は、

「FMまいづる活用情報発信業務委託」等に基づき、
実際にいつ・どんな内容が放送されたか

を、日付順に列挙したものです。

特徴は次のとおりです

  • 令和2年度(コロナ初期)から最新年度まで
  • ほぼ毎週、定期的に放送
  • 内容は
    • 市税・保険料
    • マイナンバーカード
    • 各種補助金
    • 防災・災害情報
    • イベント・観光
    • 職員募集
    • 市政・議会関連
      など 極めて多岐

👉 つまり
「FMまいづるは、市の公式広報・準公式広報として使われてきた」
ことは明白です。


⑬ それでも「効果は不明」という致命的矛盾

ここで決定的なのが、すでに舞鶴市が公式に認めている事実です。

この大量の放送について、
市は「どれだけ市民に届いたか」を示す資料を一切持っていない

つまり、

  • ✔ 何年にもわたり
  • ✔ ほぼ毎週放送し
  • ✔ 内容は市政の中枢情報
  • ✔ 年間数百万円、累計数千万円の税金を使い

それでも、

「ラジオ放送が聞かれたかどうかは分かりません」

という状態です。

これは単なる不備ではなく、
行政広報の設計そのものが破綻していることを意味します。


⑭ 危機管理・防災放送との関係で、さらに深刻

この一覧には、

  • 災害情報
  • 警戒レベル
  • 大雨・台風時の注意喚起
  • 防災訓練関連

といった、命に関わる情報も数多く含まれています。

しかし、

  • FMまいづるの聴取率不明
  • 自動起動ラジオの稼働実態不明
  • 実際に「何人に届いたか」不明

👉 これは
「危機管理手段としての有効性検証がゼロ」
ということです。

防災でこれは、極めて危険です。

舞鶴市が FMまいづる(有本積善社)に支払った総額(判明分)

約3,000万円規模(少なく見積もっても)

※ 令和2年度~令和6年度(+令和7年度一部)
※ 情報公開資料ベース・「判明しているもののみ」の合算です
(未集計・未開示分があればさらに増えます)


⑯内訳を整理します

① 情報発信業務委託(いわゆる広報枠)

  • 月額 約27万円
  • 年額 約323万円
  • 令和2~6年度で
    約1,600万円超

👉 ほぼ毎年・定額・効果測定なし


② 中継局・放送設備・管理関連(広報・政策系)

  • 五老スカイタワー中継局設置・監理
    約1,285万円(令和3年度)
  • 中継局管理・点検・電気代・免許関連
    毎年 数十万~百数十万円

👉 累計 約600~800万円規模


③ 危機管理・防災名目の支出

  • 緊急割込放送設備設置
    約325万円
  • 自動起動ラジオ
    約523万円
  • 緊急割込放送設備の運用管理
    約30万円
  • 防災訓練司会等(複数年)
    数万円 × 複数年

👉 合計 約900万円弱


⑰ 合算

区分金額(概算)
情報発信業務委託約1,600万円
中継局・設備等約700万円
危機管理・防災約900万円
合計約3,200万円

👉 少なくとも約3,000万円以上


⑱重要なポイント

  • 3,000万円規模の税金
  • 6年以上継続
  • 放送内容は詳細に管理
  • 聴取率・視聴者数・到達率はゼロ確認
  • 効果検証資料は不存在

つまり――

舞鶴市は、
3,000万円以上の税金を使って
「誰がどれだけ聴いたか分からない放送」を
継続してきた

これは
金額の問題ではなく、行政の姿勢の問題です。

さらにFMまいづるは五老ヶ岳公園 指定管理も請け負っています。

舞鶴市 → 一般財団法人有本積善社への公金支出総額(判明分)

約1億2,100万円

※ 令和2年度~令和7年度(令和7年度は途中まで)
※ すべて「舞鶴市の公式開示文書」に基づく最低額
※ これ以上ある可能性はあっても、これ以下にはなりません


⑲ 指定管理料(五老ヶ岳公園)だけでいくらか

開示された 「指定管理料支出状況一覧」 から、年度別に合算すると次のとおりです

🔹 五老ヶ岳公園 指定管理料(有本積善社)

年度金額
令和2年度16,612,000円
令和3年度16,612,000円
令和4年度14,815,000円
令和5年度14,897,000円
令和6年度14,897,000円
令和7年度(3四半期まで)11,172,750円
合計89,005,750円

👉 指定管理料だけで 約8,900万円


⑳ すでに判明している「FMまいづる関連支出」

これまでに整理した分だけでも:

  • 情報発信業務委託(広報放送)
  • 中継局設置・運用・点検・電気代
  • 危機管理・防災名目(緊急割込放送・自動起動ラジオ等)

👉 合計 約3,200万円(控えめに見積もって)


㉑ 全部合算すると

区分金額
指定管理料(五老ヶ岳公園)約8,900万円
FMまいづる関連委託・防災等約3,200万円
総合計約1億2,100万円

㉒1億円超の税金が効果を測定できずに垂れ流しされている事実

  • ✔ 同一団体(有本積善社)に
    • 放送業務
    • 危機管理
    • 観光施設指定管理
  • 分野横断で公金が集中
  • ❌ しかし
    • 放送の聴取率 → 不明
    • 広報効果 → 不明
    • 危機管理の実効性 → 不明

つまり――

舞鶴市は、
1億円を超える税金を支払いながら、
「成果を説明できない業務」を
同一団体に集中させてきた

という構図が、金額ベースで確定しました。

㉓市民として最大の疑問

これだけの税金を使って、
舞鶴市は何を「検証」したのか?

  • 放送は本当に聞かれているのか
  • 防災情報は本当に届くのか
  • 公園管理は妥当な金額なのか

👉 いずれも、説明資料は見当たらない。


㉔結び

舞鶴市は、
1億円を超える税金の流れを
市民に「見える形」で説明できていない。

これはFMまいづるだけの問題ではない。
行政のチェック機能そのものが問われている。

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