宛先:舞鶴市長、舞鶴市議会、地元経済団体 各御中

1. はじめに:迫り来る「抜本的改革」という現実と冷徹なシグナル

2026年3月、日本板硝子株式会社は米投資ファンド「アポロ・グローバル・マネジメント」の支援下に入り、非上場化による抜本的な事業改革を行うことを発表しました。

本市において長年良質な雇用を生み出してきた舞鶴工場も、主力である自動車用ガラス部門の利益率の低迷を鑑みれば、コストカット(人員削減や規模縮小)の最右翼として大なたが振るわれる可能性が極めて高い、危機的状況にあります。

経営陣の「報酬自主返上」が示す真の恐ろしさ

この改革の発表と同時に、CEO(6ヶ月間50%減)、およびCHRO(最高人事責任者)、CFO(最高財務責任者)(各3ヶ月間減)の報酬自主返上が公表されました。これを「トップが身を切って会社を立て直そうとしている」と美談で受け取るのは非常に危険です。経営的・ファンド的視点から見れば、これはこれから始まる大リストラを正当化するための冷徹なシグナルと読むべきです。

  1. 「人(CHRO)」と「金(CFO)」のトップが含まれる意味 対象者に人事と財務のトップがピンポイントで含まれていることは、今後「未曾有の人員削減とコストカット」が断行されることの明確な予告です。労働組合や地元からの猛反発に対し、「我々経営陣も痛みを分かち合っている」と強行突破するための大義名分として使われます。
  2. わずか「3〜6ヶ月」という期間のカラクリ 6,000億円の負債を整理する改革期間として数ヶ月は短すぎます。これは、アポロ社による非上場化が完了するまでの「一時的なポーズ」に過ぎません。非上場化後はファンド主導の新たな報酬体系(再建達成時の巨額なストックオプション等)に切り替わる公算が大きく、経営陣にとってこの短期間の減給は痛手ではありません。

つまり、この自主返上は**「トップが自らの給与を捨てるポーズをとらなければならないほど、従業員や地域社会に強いる犠牲(リストラ)がすさまじいものになる」**という最悪の予告編です。事態はそれほど緊迫しています。

2. 本市の基本姿勢:防衛戦から「攻めの誘致・転換」へ

民間企業、しかも米国トップクラスの合理性を追求する巨大ファンドの経営判断に対し、地元行政が「雇用の維持」や「現状維持」だけを感情的に訴えても、決定を覆すことは困難です。

本市が取るべき戦略は、不可避な痛みを冷徹に受け入れた上で、この危機を「次世代産業の集積地へと脱皮するチャンス」に変える「攻めのアプローチ」と、市民を守る「徹底した防衛策」の二段構えを即座に実行することです。

3. 具体的な3つの緊急アクションプラン

アクション1:アポロ社および新経営陣へのトップセールス(次世代技術の拠点化)

日本板硝子は、国も国家戦略として支援する次世代技術「ペロブスカイト太陽電池」への参入を表明しています。ファンドの真の狙いが、政府支援を活用した新技術の事業化による企業価値向上にあるならば、本市はその「最適な受け皿」として名乗りを上げるべきです。

  • 具体策:
    • 市長および関係トップによる、アポロ社・日本板硝子本社への早期訪問。
    • 舞鶴工場を「ペロブスカイト太陽電池の研究・量産化の最重要拠点」として位置づけるよう強く要請。
    • 拠点化に応じた場合の本市独自のインフラ支援、税制優遇、工場用地の拡張支援などの「インセンティブ・パッケージ」の早期策定と提示。

アクション2:避けられない人員削減に備えた「官民一体のセーフティネット」構築

ファンド主導の再編において、数ヶ月から半年という極めて短期間で大規模な希望退職の募集や人員整理が行われる可能性があります。失業者の急増による地域経済へのダメージと人口流出を食い止めるための準備が急務です。

  • 具体策:
    • 市役所内に「日本板硝子 雇用対策特別デスク(仮称)」を即時設置。
    • ハローワーク、京都府、地元企業と連携し、舞鶴工場からの離職者を地元の中小企業や人手不足の産業(福祉、建設、他の製造業など)へ迅速にマッチングするシステムの構築。
    • 離職者のスキルチェンジを支援する職業訓練プログラムの拡充と、一時的な生活資金貸付などを含めた生活相談窓口の強化。

アクション3:国・京都府との連携による「リスクマネーと補助金」の引き出し

ファンドの投資を引き出すには、「舞鶴市で事業展開すれば、国の手厚い支援が受けられる」という強力な材料が必要です。市単独の財源には限界があるため、国や府との連携が鍵を握ります。

  • 具体策:
    • 京都府知事と連携し、経済産業省など関係省庁へ緊急要望を実施。
    • 舞鶴地域を、ペロブスカイト太陽電池をはじめとする次世代エネルギー産業の「特区」として指定するよう働きかけ、国からの大型補助金や実証実験の予算を優先的に舞鶴に誘致するスキームの構築。

4. 結びにかえて

もはや「舞鶴工場は大丈夫だろう」という楽観論は通用しません。前述の経営陣の動向が示す通り、極めて冷徹で劇烈な改革がすぐそこまで迫っています。 アポロ社からの具体的なリストラ案が提示されてから動くのでは遅すぎます。市役所および市議会におかれましては、最悪のシナリオを想定した上で、ただちに本提言に基づく具体策の検討・実行チームを立ち上げ、先手先手で対応されることを強く要望いたします。

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