
2025年12月22日 年末のあわただしい中、市民の目からさけるようにこっそりと市議会議員のボーナスを3%も増加させる条例改定案が提出され可決された。
提出者 舞鶴市議会議員 川口 孝文
賛成者 〃 上野 修身
〃 上羽 和幸
〃 高橋 秀策
〃 仲井 玲子
〃 眞下 隆史
〃 山本 治兵衛
自民党、公明党、日本維新の会の連名。
以前の京都新聞の報道では「市議のボーナスは1.7%増」と伝えられ、市民の多くは
「少し増えただけなのだろう」
という印象を持ったのではないだろうか。
しかし、実際に12月に支払われた金額を基に検証すると、話はまったく違う。
結論から言う
今年12月、市議のボーナスは「約3%」増えている
今回の条例改正では、期末手当の支給割合が次のように変更された。
- 改正前:172.5%
- 今年12月:177.5%(一時的に引き上げ)
- 来年4月以降:175%(「引き下げ」と説明されている)
このうち、**実際に今年12月に支払われたのは177.5%**である。

一般市議の実額で見ると
今年12月の一般市議のボーナスは
872,850円 だった。
これを改正前の水準(172.5%)に戻して逆算すると、
- 改正前相当:約 848,200円
- 増額分:約24,650円
増加率は
約2.9%。
つまり、
今年12月の実態は「約3%増」
であり、「1.7%増」という表現とは大きな差がある。
議長はどうか
議長の12月ボーナスは
1,130,737円。
同じように計算すると、
- 改正前相当:約 1,098,900円
- 増額分:約31,800円
- 増加率:約 2.9%
👉 議長も、一般市議と同じく約3%増である。
市議25人トータルではいくら増えたのか
舞鶴市議会の議員数は 25人(議長含む)。
増額分の合計(今年12月分)
- 一般市議 24人
約24,650円 × 24人 = 約591,600円 - 議長 1人
約31,800円
合計
約623,400円
※副議長のボーナスが若干高額であるので実際はも少し高い。
つまり、こういうことだ
今回の条例改正により、
市議25人の12月ボーナスは、
合計で約62万円増額され、
すでに支払われている。
これは将来の話ではない。
すでに市民の税金として12月初旬に支出済みである。
なぜ「1.47%増」と報じられたのか
新聞報道の「1.47%増」は、
- 今年12月の 177.5% ではなく
- 将来の 175% と
- 改正前 172.5% を比較した数字
を使っている。
確かに計算上は間違いではない。
しかし、
- 今年12月に何が起きたのか
- 実際にいくら支払われたのか
という、市民にとって最も重要な点が外されている。
さらに問題なのは「議会採択前に支給」されていたこと
今回のボーナスは、
条例が議会で可決される前に支給されている。
条例には
- 「12月1日にさかのぼって適用する」
- 「すでに支給した分は内払いとみなす」
という規定が置かれ、
後から条例で正当化する仕組みになっている。
形式的には違法ではない。
しかしこれは、
- 議会のチェック機能の形骸化
- 市民が知らないうちに支給が完了している
- 反対しても取り戻せない
という、極めて市民不在の運用だ。
「引き下げ」と言いながら、元には戻らない
来年4月以降は「175%に引き下げ」と説明されているが、
- 改正前:172.5%
- 改正後:175%
👉 改正前より高い水準のまま固定される。
「下げた」のではない。
一度上げて、高い位置で落ち着かせただけである。
市民オンブズマンとして問いたい
- 市民の生活は本当に楽になっているのか
- なぜ議員報酬だけが、当然のように上がるのか
- なぜ実態より小さく見える数字で説明されるのか
少なくとも、
新聞報道された「市議のボーナスは1.7%増」という説明は、
市民に実態を正確に伝えていない。
数字は嘘をつかない
しかし、どの数字を出すかで、印象は操作できる。
これからも、市民の立場から
「本当はいくらなのか」「実際に何が起きているのか」
を明らかにしていきたい。
さかのぼり支給は、何のための制度なのか
本来、**条例や予算の「遡及適用(さかのぼり)」**は、
次のような場合を想定したものです。
本来想定されているケース
- 自然災害・大規模事故
- 災害対応で急な支出が必要
- 議会を待っていたら対応が遅れる
- 国の制度変更・補正予算
- 国の決定が年度途中
- 地方が追随するまで時間差が生じる
- 被災者・住民の不利益を防ぐため
- 支給が遅れると生活に支障が出る場合
👉 共通点はただ一つ。
「想定外の事態」「緊急性」「住民の不利益回避」
このために、
例外的に、さかのぼり処理が認められているのです。
今回の市議ボーナスは、この条件に当てはまるか
冷静に整理します。
今回の特徴
- 自然災害:❌ なし
- 緊急事態:❌ なし
- 市民生活への影響:❌ なし
- 支給対象:⭕ 市議本人のみ
- 金額:⭕ 増額
しかも、
- 毎年決まった時期に支給される
👉 期末手当(ボーナス) - 事前に議案提出できたはず
- 議会日程も事前に分かっていた
👉 「議会に間に合わなかった」理由は存在しない
なぜ、それでも「さかのぼり」が使われたのか
理由は一つです。
先に支給したかったから
- 12月に増額分を確実に受け取る
- あとで条例を通して追認する
- 仮に議論が荒れても、返す必要はない
そのために、
- 「12月1日にさかのぼって適用」
- 「すでに支給した分は内払いとみなす」
という保険条項が置かれています。
法律的にはどうなのか
正直に言います。
- ❌ 明確な違法とは言いにくい
- ⭕ しかし、極めてグレー
- ❌ 制度趣旨には反する
地方自治法・判例上、
- 不利益な遡及 → 原則禁止
- 利益な遡及 → 慣行的に容認
とされてきました。
しかしこれは、
「国の給与改定に連動する」「住民不利益を防ぐ」
という前提があってこそです。
今回のように、
- 議員自身の報酬
- 緊急性なし
- 市民不利益なし
- しかも増額
というケースでの使用は、
制度の濫用と言って差し支えありません。
最大の問題は「議会が自分をチェックしていない」こと
本来の流れはこうです。
- 条例案を提出
- 市民に説明
- 議会で議論
- 可決後に支給
しかし実際は、
- 先に支給
- あとで条例提出
- 議会で追認
- 市民は事後に知るだけ
👉 チェック機関としての議会が、完全に形骸化
しかも今回は、
チェックすべき当事者=受益者が議員自身です。
まとめ
さかのぼり支給は、
災害や緊急時に市民を守るための「例外措置」である。それを、
緊急性のない議員ボーナス増額に使うことは、
制度の趣旨を根本から歪めている。
非課税世帯が市民の3人に1人(33%)に達している舞鶴市で、
生活が限界に近づいている市民への新たな支援は何一つ示されていない。
それにもかかわらず、
市民を守る責務を負う市議会議員だけが、
緊急性も合理性もないのに制度の例外を使い、
条例をさかのぼらせ、議会採択前にボーナスを受け取った。
これは「制度上可能だった」という話ではない。
やっていいかどうかの問題だ。
しかも、その実態は
「1.47%増」という、市民に実感を持たせない数字で覆い隠され、
実際には今年12月だけで約3%、
市議25人で約62万円もの増額が、
市民に知らされぬまま、すでに支払われている。
困っている市民には
「財源がない」「国の制度がない」と言い、
自分たちには
「慣例だ」「国に準じた」と言って金を取る。
これは政治判断ではない。
自己保身だ。
市議会は、
市民のために存在する機関ではなく、
自分たちを守るための組織に堕していないか。
苦しい市民への支援は後回しにし、
自分たちのボーナスだけは、
さかのぼって、確実に、抜け目なく受け取る。
この姿を見て、
誰が「市議会は市民の味方だ」と言えるのか。
市民を守るべき立場にある者が、
市民を欺き、市民より先に手を伸ばす。
これは弁解の余地のない裏切りである。


